Morgan Stanleyが、総報酬0.14%の現物ビットコインETF「Morgan Stanley Bitcoin Trust(MSBT)」を米国市場に上場した。既存の主要商品を下回る低コストを打ち出しており、BlackRockの「iShares Bitcoin Trust(IBIT)」を中心とする現物ビットコインETF市場で、手数料競争が広がる可能性が出ている。ブロックチェーン専門メディアのBeInCryptoが9日(現地時間)、報じた。
MSBTは8日に上場した。初日の純流入額は約3060万ドル(約46億円)、出来高は160万株超だった。BloombergのETFシニアアナリスト、エリック・バルチュナス氏は、この初動についてETF全体でも上位1%に入る水準だと評価している。初年度の運用資産が50億ドル(約7500億円)に達する可能性もあるとの見方を示した。
MSBTの総報酬0.14%は、IBITを11ベーシスポイント下回る水準だ。市場では、この値下げがBlackRockを含む競合各社の価格戦略に影響を与えるかに関心が集まっている。
もっとも、バルチュナス氏は、BlackRockが直ちに対抗値下げに動く可能性は低いとみる。IBITについては「圧倒的な流動性を背景に市場の首位に立っており、価格決定力も持つ」との見方を示した。IBITの運用資産は現在約550億ドル(約8兆2500億円)で、現物ビットコインETFとして最大規模となっている。
流動性の差は、機関投資家マネーの獲得を左右する重要な要素だ。IBITは売買コストの低さに加え、厚みのあるオプション市場の流動性も確保しており、機関投資家が商品を選ぶ際の強みになっている。Bloombergのアナリスト、ジェームズ・セイファート氏も、MSBTが短期間でIBITと流動性面で肩を並べるのは難しいとみている。
ただ、手数料面での圧力が全くないわけではない。バルチュナス氏は、MSBTの積極的な低価格戦略が、他社の値下げを促す可能性があると指摘した。現物ビットコインETFは、いずれも同じ基礎資産に連動するため差別化の余地が限られ、手数料が主要な競争軸になりやすい。
実際、MSBTの手数料はGrayscaleの「Bitcoin Mini Trust(BTC)」の0.15%を1ベーシスポイント下回り、Fidelityの「Wise Origin Bitcoin Fund(FBTC)」の0.25%よりも低い。とりわけ規模の小さい運用会社にとっては、市場シェア防衛の面で直接的な圧力となる可能性がある。
Morgan Stanleyの販売網も注目点だ。同社の資産管理部門には、米国で約1万5000~1万6000人のファイナンシャルプランナーが所属し、顧客資産は9兆3000億ドル(約1395兆円)に上る。バルチュナス氏も、この助言ネットワークは想定外だったとしたうえで、今後は外部商品より自社ETFが優先的に提案される可能性があるとみている。
BlackRockが手数料方針を見直すかどうかは、主に2つの条件に左右されるとの見方が出ている。1つは、MSBTが足元の資金流入ペースを維持し、一定規模の新規資金を呼び込めるかどうか。もう1つは、その低価格戦略を競合運用会社が実質的な脅威と受け止めるかどうかだ。焦点は、MSBTが単なる低コスト商品にとどまらず、資金フローそのものを変えられるかにある。
市場環境もなお不透明だ。米国の現物ビットコインETF市場の累計資産は、2024年1月の上場開始以降、1000億ドル(約15兆円)を超えた。一方で、2025年11月から2026年2月にかけては4カ月連続の純流出となり、勢いは鈍化した。3月には13億2000万ドル(約1980億円)の純流入に転じている。
MSBTが初日の好調を一時的なものに終わらせず、3月以降に回復した資金流入の流れを取り込めるかが、今後の手数料競争の強さを左右しそうだ。BlackRockがすぐに動かなくても、他の運用会社が先に値下げ圧力にさらされる可能性は高まっている。
Morgan StanleyはMSBTについて、高い透明性のある開示と0.14%の経費率を備え、伝統的な資産運用の知見と暗号資産分野での経験を組み合わせたカストディ体制で支える商品だと説明している。