Ceragemは、医療機器分野でAIトランスフォーメーション(AX)を加速している。リアルタイム性が重要な機能については、エッジAIを活用して機器側で処理する方針を打ち出し、体験拠点で蓄積したデータや外部企業との連携を通じて統合プラットフォームの強化も進める。
パク・ジュンヨンAXセンター長はDigitalTodayの取材に対し、「リアルタイム性が求められる機能は、エッジAIアーキテクチャを優先的に検討している。機微なデータを機器側で一次処理できるよう、設計方針を定めている」と述べた。
エッジAIは、クラウドサーバーを介さずに機器内でAI処理を行う方式だ。Ceragemは、応答速度の確保とデータ保護の両立を狙う。
同社がAXを本格化している背景には、「AIウェルネスホーム」戦略がある。住まいを健康管理のプラットフォームと位置付け、AIを組み込んだサービス展開を進める考えだ。
この取り組みを担うAXセンターは、2025年下期に発足した。パク氏は「健康管理の習慣を日常生活の中で継続するには、自宅が中核になると考えた」としたうえで、「利用者の状態を把握し、その状況に応じたサービスを提供するためにAI技術を適用している」と説明した。
医療機器へのAI適用は、ソフトウェア中心のAIサービスとは性格が異なる。機器が身体に直接作用するためだ。パク氏は「単なるデータ分析にとどまらず、状態の認識とそれに応じた管理を一体で実現することが中核になる」と語った。
AIを適用した製品は、利用者の身体状態に応じて必要なヘルスケアソリューションを提示し、複数の機能を統合して動作する構想だ。
代表的なコンセプトとして、CeragemはCES 2026で「マスターAIマルチセラピーポッド」を披露した。脊椎ケアをベースに、LEDスキンケア、温熱、電気筋肉刺激(EMS)など10種類超の機能を組み合わせ、利用者の状態に合わせた管理プログラムを構成する。
商用化前の段階ではあるものの、外部評価はおおむね良好だという。CESイノベーションアワードの受賞件数は、2024年の3件から2025年は6件、2026年は12件へと増え、3年連続で倍増した。
一方、医療機器である以上、AIの誤判断を前提にした安全設計が重要になる。パク氏は「安全関連機能を段階ごとに定義し、『事前同意後に実行』『厳格に統制』『通知後に待機』といったゾーン別の実行権限を考慮している」と述べた。
AIの介入方法については、「常時介入するのではなく、必要な瞬間にだけ現れる顧客体験を志向している」と説明した。商用化に先立ち、関連基準に沿った十分な検証を行う方針も強調した。
睡眠、血圧、血糖値などの生体データをAIで分析する際には、医療行為との境界をどう引くかが慎重な対応を要する論点となる。パク氏は「医療的な判断や診断と受け取られ得る領域については、関連基準と法的検討を前提に慎重に進めている」としたうえで、「現時点ではウェルネスとユーザー体験を中心に検討している」と述べた。
同社は、体験拠点で蓄積したデータも技術高度化に活用する。各地で運営する「Ceragem Well Lounge」を顧客接点として位置付ける。
「セラチェック1.0」の運用を通じて顧客ニーズを把握し、メンタル関連の測定項目を従来の9種から15種に拡大した。さらに、学習能力、認知機能、心理検査など32種の新規項目を追加した「セラチェック2.0」へと高度化したという。
店舗でしか提供できなかった測定体験を家庭にも広げる統合プラットフォームの準備も進めている。
外部技術の確保に向けては、「ヘルスケアアライアンス」も進めている。Ceragemは2025年10月、AI・ヘルスケア関連企業5社と初のMOUを締結した。さらに2026年3月には、AIベースのデジタルバイオマーカー分析企業DeepMedi、遠隔診療企業Soldocなど4社と追加で提携した。
データセキュリティ面ではISMS-P認証を維持しており、必要に応じて外部のセキュリティ企業との協業も進める方針だ。
AXセンターは、製品R&D組織とは役割を分けている。AXセンターはAI技術とデータをプラットフォームの観点でつなぎ、製品とサービス全体の方向性を設計・構築する役割を担う。
一方、製品R&D組織は個別製品の機能実装と品質確保を担当する。パク氏は「AXセンターは単にAI技術を導入する組織ではなく、ガバナンスの構築から実行までを主導する中核組織の役割を果たす」と話している。