ステーブルコインの取引規模が今後10年で既存の決済ネットワークを上回る可能性がある。オンチェーン決済インフラの整備に加え、デジタル資産に慣れた世代への移行が進むことで、ブロックチェーンベースの決済が本格普及の局面に入るとの見方が出ている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが4月9日付で伝えたChainalysisのレポートによると、ステーブルコインの年間取引規模は2035年に最大1500兆ドルへ拡大する可能性がある。オンチェーン決済インフラの普及、デジタル通貨に親和性の高い世代の台頭、企業の決済システム転換が同時に進んだ場合を想定した。
レポートは、足元のトレンドが続くだけでも、年間の調整後取引額が約719兆ドルに達する可能性があると試算した。経済環境と技術変化が本格化すれば、規模はさらに2倍超に膨らむ可能性があるという。
足元の拡大ペースも速い。レポートによれば、2025年の世界のステーブルコイン取引規模は33兆ドルを超え、VisaとMastercardの合算処理額を上回った。こうした流れが続けば、2035年を待たずにオンチェーン取引件数が既存のカードネットワークを追い抜く可能性もあるとしている。
背景の一つとして挙げたのが、世代間の資産移転だ。レポートは、ミレニアル世代とZ世代に最大100兆ドル規模の資産移転が起こる可能性があると指摘。その相当部分がすでに暗号資産を保有しており、デジタル資産に慣れた世代が決済手段そのものを変える可能性があると分析した。
Chainalysisは、変化の本質は単なる投資需要にとどまらないとみる。若年層は、即時性、モバイル中心の使い勝手、越境利用のしやすさを決済の基本要件と捉えており、こうした期待が世界の資金移動のあり方を再定義する可能性があるという。消費者と企業の双方で、銀行やカードネットワークを介さず、ブロックチェーンベースの決済網を選ぶ動きが強まる可能性がある。
実店舗での利用拡大も成長要因と位置付けた。レポートは、POSシステムとの連携だけでも、2035年までに最大232兆ドル規模の効果が見込めると試算。加盟店がステーブルコインを直接受け入れる動きが広がれば、投資対象を超えて実際の決済手段として定着が進むとみている。
既存の決済事業者も対応を急いでいる。Stripeは最近、Bridgeを11億ドルで買収した。MastercardもBVNKの買収を最大18億ドルで進めると発表した。
レポートは、こうした動きについて、伝統的な決済事業者がステーブルコインを一時的なブームではなく、将来の決済構造を構成する要素として捉えている表れだと評価した。2035年を待たず、大規模なステーブルコイン決済に対応するシステム設計がすでに進んでいる点にも言及した。
規制環境の整備も普及を左右する要素に挙げた。レポートは、ドナルド・トランプ大統領が昨年夏に「ジニアス法案」に署名したとされる点に触れ、政策当局がステーブルコインをより本格的に扱い始めたと説明した。制度の明確化が進むほど、企業は不確実性を抑えながら関連サービスを投入しやすくなるとの見方だ。
普及を後押しする直接要因としては、コストと処理速度の差を指摘した。従来の決済ネットワークは複数の仲介者やバッチ処理を経るのに対し、ステーブルコインはほぼ即時に決済できる。24時間稼働し、越境送金にも相対的に強いとした。
その結果、決済手数料や清算時間を抑えられるほか、企業の会計処理や資金管理の簡素化にもつながる。こうした利点は、すでに送金や企業間決済、財務管理の分野で採用を後押ししているという。
最終的に、ステーブルコイン普及のスピードは、企業導入、規制整備、実店舗決済網との連携という3つの要素に左右される。条件がそろえば、ステーブルコインは既存のカードネットワークに代わる新たなグローバル決済インフラとして定着する可能性が高い。