Amazon Web Services(AWS)は、OpenAIとAnthropicの双方に大規模投資していることを巡る利益相反の懸念について、問題はないとの立場を示した。あわせて、今後の生成AI市場は単一モデルではなく、複数モデルを使い分ける方向に進むとの見方を示した。
米ITメディアTechCrunchによると、AWSのマット・ガーマン最高経営責任者(CEO)は8日(現地時間)、米サンフランシスコで開かれた「HumanX」カンファレンスに登壇し、OpenAIへの500億ドル(約7兆5000億円)の投資と、Anthropicとの長期協業および80億ドル(約1兆2000億円)の出資を巡る利益相反の指摘に対し、「これはAWSが長年続けてきた事業の進め方だ」と述べた。
ガーマン氏は、AWSでは創業初期から、提携先と協業しつつ競合関係にも立つ構図が続いてきたと説明した。クラウド事業ではすべてのサービスを自社だけで賄うことは難しく、外部企業との連携が不可欠である一方、テクノロジー業界の構造上、競争関係が生じるのも自然だという。
同氏は「テクノロジーは相互に深く結びついており、パートナーと競合する状況は避けられない」と述べたうえで、「AWSはそうした環境の中で市場に対応する力を培ってきた」と強調した。自社サービスが提携先の製品と競合する場合でも、「自分たちに不公平な優位性を与えないという原則を守ってきた」と付け加えた。
今回の発言は、AWSが生成AI市場で複数の有力モデル企業と同時に連携する戦略を正当化したものと受け止められている。OpenAIとAnthropicは、いずれも生成AI分野の有力企業として直接競合する立場にあるが、AWSは両社のモデルを自社クラウド上で提供する方針を取っている。
背景には、クラウド市場での競争激化がある。両社のモデルはすでにMicrosoftのクラウドでも提供されており、AWSにとってもOpenAIのモデル確保は事実上不可欠に近かったとの見方が出ている。
ガーマン氏はさらに、今後のAIサービスは単一モデル中心ではなく、「マルチモデル」体制へ移行するとの見通しを示した。クラウド事業者は、用途に応じて最適なモデルを自動的に割り当てる「モデルルーティング」機能の強化を進めており、計画立案、推論、コード生成などの各タスクに応じてモデルを組み合わせる手法が広がると説明した。
こうした流れは、クラウド事業者の影響力を一段と高める可能性がある。利用企業は特定のモデルに依存せず、プラットフォーム上で複数のモデルを選択できる一方、クラウド事業者は外部モデルと自社モデルを併存させながら主導権を確保しやすくなるためだ。
投資市場でも、特定のAI企業との排他的な関係は薄れつつある。Anthropicが最近実施した大規模な資金調達ラウンドには、OpenAIの投資家に加え、Microsoftも参加したと伝えられている。
AWSの戦略は、AI時代のクラウド事業者が単なるインフラ提供者にとどまらず、競合する複数のモデルを束ねて流通させる仲介役へと役割を広げていることを示している。今後の焦点は、特定モデルとの独占的な関係よりも、クラウド事業者が複数のAIパートナーと自社サービスの利益相反をどう管理するかに移りそうだ。