Strategyのマイケル・セイラー会長は4月8日、New York Times(NYT)がアダム・バック氏をビットコインの創設者サトシ・ナカモトの有力候補とした報道に反論し、文体分析だけでは立証できないと主張した。確証となるのは、サトシの秘密鍵による署名だけだとしている。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoによると、セイラー氏は、サトシの正体を巡る議論について「秘密鍵による署名がない限り、いずれも推測の域を出ない」との立場を示した。
その根拠として挙げたのが、2008年当時にサトシとバック氏の間で交わされたとされるメールだ。セイラー氏によれば、バック氏は2008年8月にサトシから連絡を受け、近く公表されるビットコインのホワイトペーパーでHashcashに言及するとの内容を確認していたという。
セイラー氏は「文体分析は興味深いが、証拠ではない」と指摘したうえで、当時のメールは両者が別人であることを示唆していると述べた。
さらに、サトシの正体を巡る他の説についても同じ基準で見るべきだと強調した。「誰かがサトシの鍵で署名するまで、あらゆる理論は推測にすぎない」とし、調査報道や状況証拠だけで結論づけることはできないとの考えを改めて示した。
こうした見方は、セイラー氏が従来語ってきたビットコイン観とも重なる。サトシが表舞台から退いたのは意図的であり、その結果としてビットコインから中央集権的な権威が取り除かれたと、同氏は繰り返し述べてきた。
セイラー氏は過去に、「サトシが道を作り、それを世に出した後に去った」と表現したこともある。ビットコインは特定の創設者や指導者に依存せず、ネットワークとして機能すべきだという考え方だ。
Strategyは大量のビットコインを保有している。約545億7000万ドル(約8兆1855億円)を投じて76万6970BTCを取得しており、企業としては世界最多の保有量となっている。
こうした立場の背景には、ビットコインを特定個人に依存する資産ではなく、分散型の通貨ネットワークとみなす認識がある。設計者が誰かよりも、ネットワークの構造そのものが重要だという考えだ。
一方、アダム・バック氏本人も、自身がサトシだとする見方を強く否定した。自分の文章とサトシの文体が似て見える理由については、サイファーパンクに共通する問題意識と確証バイアスを挙げた。
今回の文体分析は、計算言語学者のフロリアン・カピエロ氏が主導した。分析対象となった12人の中で、バック氏が最も近いとの結果が示されたが、分析自体も決定的な証拠とはみなされていない。
セイラー氏の主張は明確だ。サトシの秘密鍵による署名が示されない限り、ビットコインの創設者を巡る議論は続いたとしても、確定的な事実として受け止めることはできないという。
そのうえで同氏は、サトシの実名を特定すること以上に、ビットコインがリーダー不在でも維持される分散型ネットワークであり続けるかどうかが重要だとの認識を示している。