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イランが、ホルムズ海峡を通過するタンカーに対し、暗号資産建ての通航料を課す案を検討していることが分かった。事前承認や貨物審査を通航条件とする方針で、通航料は原油1バレル当たり1ドル(約150円)を想定。その後、同国は海峡通航の全面停止も表明しており、市場と海運業界に波紋が広がっている。

Ars Technicaが8日(現地時間)に報じた。報道によると、イランは2週間の停戦期間中も海上交通の要衝であるホルムズ海峡の統制を維持する狙いから、事前承認、貨物審査、デジタル資産での決済を新たな通航条件として検討している。

イラン石油・ガス・石油化学製品輸出業者連合の報道官、ハミド・ホセイニ氏は、すべてのタンカーに対し、通航前に貨物情報を電子メールで提出するよう求める考えを示した。審査を終えた船舶には暗号資産建ての通航料を課し、料金水準は原油1バレル当たり1ドルとする。空荷のタンカーについては、追加的な制限なしに通航を認めるとしている。

イラン側は、今回の措置は治安管理が目的だと強調している。ホセイニ氏は「武器移転を防ぐため、海峡を往来する船舶を監視する必要がある」と説明。「通航自体は可能だが、手続きには時間を要する」と述べた。最終的な通航条件は、最高国家安全保障会議が決定するという。

暗号資産決済の導入には、制裁回避の思惑もにじむ。イランは、審査を終えた船舶に対し、ビットコインで即時決済するよう求める計画で、資金追跡や資産差し押さえのリスクを抑える狙いがあるとしている。船舶に対し、自国沿岸に近い北側航路の利用を求める可能性もある。

報道を受け、暗号資産市場も反応した。ビットコインは一時7万2000ドルを上回り、その後は上げ幅を縮小。足元では7万1342ドル前後で推移している。イーサリアムとソラナもそれぞれ7%超上昇した。

一方、イランは同日遅く、イスラエルによるレバノン空爆への対応として、ホルムズ海峡を通過するタンカーの通航を全面的に停止すると発表した。湾岸海域の船舶に対しては、イランの承認を得ずに通航した場合、軍事攻撃の対象になり得るとする英語の警告放送も流した。録音には「許可なく通過を試みる船舶は破壊される」との文言が含まれていた。

海運業界では、通航再開の行方に慎重な見方が強い。世界2位の海運会社Maerskは、通航条件を確認中だとしたうえで、停戦が一定の機会をもたらす可能性はあるものの、航路の安全性が十分に確保されたわけではないと説明した。貨物輸送についても、当面は慎重運航を続ける方針だという。

現場では滞船の深刻化も進んでいる。現在、湾岸海域では原油と精製品あわせて約1億7500万バレルを積載した187隻のタンカーが待機している。業界では、通航再開に備えて300~400隻が出航準備を進めているとみられている。

ただ、ボトルネックの解消には時間がかかる見通しだ。EOSリスクのアドバイザリー責任者、マーティン・ケリー氏は「現在待機している船舶を2週間で処理するのは不可能だ」と指摘。1日当たりに通航できる船舶数は10~15隻にとどまり、戦争前の1日135隻を大きく下回るとしている。

今後の交渉でも、海峡の統制権は主要な争点になりそうだ。ドナルド・トランプ米大統領は停戦条件として、イランに対し「完全かつ即時で安全な海峡開放」を要求。これに対し、イラン最高国家安全保障会議は、軍と連携した新たな「安全通航プロトコル」を盛り込んだ交渉案を提示した。サウジアラビア、カタール、アラブ首長国連邦(UAE)など湾岸諸国は、イランが海峡の統制を維持する可能性に強く反発している。

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