画像はNASAが進める月通信中継衛星構想のイメージ(画像=NASA)

米航空宇宙局(NASA)は、有人月探査ミッション「Artemis II」で宇宙船「Orion」に次世代の通信体制を導入する。近宇宙向けの「Near Space Network(NSN)」、深宇宙向けの「Deep Space Network(DSN)」に加え、レーザー光通信システム「O2O」を組み合わせることで、深宇宙での通信容量を引き上げ、高精細映像の伝送にも対応する狙いだ。

打ち上げ直後から月遷移軌道に入るまでの区間ではNSNが通信を担い、その後はDSNに切り替える。DSNは米国、スペイン、オーストラリアに配置した大型アンテナ群を通じ、数十万km級の距離でも安定した通信を維持できるよう設計されている。

一方で、深宇宙では従来の電波通信だけでは扱えるデータ量に限界があるとされてきた。そこでNASAは、これを補う手段としてO2Oを導入する。MIT Lincoln Laboratoryと共同開発したシステムで、有人月探査でレーザー通信を実証する初の事例となる。

O2Oの中核を担う端末「MAScOT」は、猫ほどの大きさの小型装置だ。4インチの光通信用望遠鏡を2軸ジンバルに搭載し、地上の受信局を高精度で追尾する。赤外線レーザーを受信局へ正確に照射することで、電波通信を大きく上回る伝送容量を確保する仕組みだ。

NASAが示した目標伝送速度は最大260Mbps。科学データや飛行計画の送受信に加え、乗員の音声通信や4K映像伝送も支援できる水準としている。試験では、従来の無線通信と比べて100倍超の伝送性能向上が確認されたという。

ただ、月の裏側を通過する際の通信断は引き続き課題となる。Orionでは月の裏側通過時に約40分間のブラックアウト(通信断)が生じ、その後DSN経由で通信を復旧するケースが想定されている。

NASAはこの課題への対応策として、月軌道中継衛星プロジェクト「Lunar Communications Relay and Navigation Systems(LCRNS)」も進めている。商用パートナーにはIntuitive Machinesを選定しており、月周辺で途切れにくい通信インフラの構築を目指す。

Artemis IIで導入する通信体制は、ミッション運用の高度化にとどまらない。将来の月面基地建設や長期の有人探査を支える基盤となる可能性があり、Artemis計画全体における重要なインフラとして位置付けられそうだ。

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