ソウル市が、約51兆ウォンの公金を預ける次期市金庫の選定に向けた公募手続きを始めた。低コスト預金の確保に加え、ブランド力や官公庁営業にも波及する大型案件で、銀行間の競争は一段と激しくなりそうだ。
金融業界によると、ソウル市は年末で現行契約が満了する市金庫について、公開競争方式で次期受託先の選定に入った。選ばれた銀行は2027年から2030年までの4年間、歳入金の収納、歳出金の支払い、資金管理を担う。
第1金庫は一般会計と特別会計、第2金庫は基金を担当する。
今後のスケジュールは、9日に提案書説明会を開き、5月4〜6日に提案書を受け付ける。その後、5月中に「金庫指定審議委員会」を開催し、金庫ごとの最高得点機関を選定する計画だ。6月に協約を締結し、下半期には収納システムの構築を進める。
ソウル市金庫は、銀行の官公庁営業における最大級の案件とされる。ソウル市の確定予算は51兆4778億ウォンに達しており、受託銀行が確保できる資金規模は他の自治体を大きく上回る。
市金庫に選ばれれば、平均5兆ウォン超の低コスト預金を安定的に確保できるとされる。さらに、ソウル市職員約4万5000人の給与口座に加え、傘下機関や協力会社との取引拡大も見込めるため、リテール基盤の強化にもつながる。
「首都ソウルの市金庫」を担うという象徴性も大きい。企業金融や投資金融の分野で対外的な信頼感を高める実績となるため、市場では単なる収益案件ではなく、ブランドと営業基盤の強化を狙う戦略投資とみる向きが多い。
◆Shinhan Bank守勢、Woori Bankは奪還狙う構図
今回の選定は、Shinhan BankとWoori Bankを軸に展開するとの見方が強い。Shinhan Bankは2018年に第1金庫を獲得し、2022年には第2金庫も取得して現在は両金庫を担う。過去8年で構築した専用システムや資金決済体制、運営の継続性が強みで、昨年末から専門タスクフォースを組成し、防衛戦略を具体化している。
一方のWoori Bankは、1915年の京城府金庫時代から100年以上にわたりソウル市金庫を担ってきた経緯がある。2018年にShinhan Bankへ明け渡した後だけに、象徴的案件の奪還に向けた意欲は強いとみられている。ソウル市25区のうち14区で区金庫を運営している点も競争力として打ち出す。
市金庫と区金庫をあわせて受託できれば、資金の流れや精算業務の効率化でも優位に立てるとの判断だ。
KB Kookmin BankやHana Bankが参戦するかも焦点だ。両行は公式な立場を明らかにしていないが、応札すれば競争がさらに過熱する可能性がある。
ソウル市を皮切りに、全国約80の自治体が今年、次期金庫の選定に入る見通しだ。銀行による公金受託競争は全国に広がる可能性が高い。
次の激戦区としては、予算規模が15兆ウォンの仁川が挙がる。今年本店を仁川へ移したHana Bankが、現在の受託行であるShinhan Bankに対して攻勢を強めるとの観測も出ている。慶北、全南など大規模自治体まで含めると、今年改選期を迎える自治体金庫の総規模は170兆ウォンに達する。
◆評価基準見直し、金利と運営力が勝敗左右
今回のソウル市金庫選定では、条例改正を踏まえた新たな評価基準が適用される。配点は100点満点で、金庫業務の管理能力が28点、信用度・財務安定性が25点、貸出・預金金利が20点、市民の利便性が18点、地域社会への貢献実績が7点となる。
とくに普通預金金利の配点は、従来の6点から8点へ引き上げられた。金利条件を巡る競争はこれまで以上に激しくなる見通しだ。審議委員会は金融・財政、電算・セキュリティ、会計分野の民間専門家が過半を占める構成とし、評価の公正性を高める方針という。
競争の軸も、従来の拠出金中心から、金利条件やシステムの安定性、行政支援能力を含めた総合評価へと移っている。拠出金の多寡だけでなく、実効性のある運営モデルを示せるかが勝敗を左右する構図だ。
もっとも、銀行側の負担は重い。2022年にShinhan Bankがソウル市に提示した拠出金は約3000億ウォンで、各種運営費用まで含めた実質負担はそれを大きく上回るとされる。昨年、京畿道の金庫を分け合ったNH Nonghyup BankとHana Bankも、拠出金として計2000億ウォンを負担した。
競争が過熱すれば、拠出金はさらに膨らむ可能性がある。自治体側が高い預金金利を求めるなか、金利見通しを誤って過度な条件を提示すれば、逆ざやに陥るリスクもある。低コスト預金を確保しても、金利低下局面では預貸金利ざやの改善効果が限られる点も変動要因となる。
金融業界関係者は「ソウル市金庫は単純な収益性だけで判断しにくい案件だ。官公庁営業とブランドの両面で戦略的な価値が大きい」と話した。
パク・ギョンファン財務局長は「市金庫の選定は、今後4年間にわたりソウル市の資金を安定的に運用する基盤づくりだ。公正で透明な評価手続きを通じ、市の財政運営に最も適した金融機関を選びたい」と述べた。