写真=Slate

米自動車大手が、3万ドル前後(約450万円)の低価格電気自動車(EV)市場をにらみ、装備を絞り込んだシンプル仕様の投入を検討している。機能を維持したまま原価を下げる中国勢とは対照的で、低価格帯EVを巡る競争戦略の違いが浮き彫りになっている。

EV専門メディアのInsideEVsが6日(現地時間)に報じた。焦点となっているのは、電池材料や製造工程の革新ではなく、エントリーモデルから快適装備やインフォテインメント機能を削り、販売価格を引き下げるアプローチだ。

具体的には、入門モデルで装備を最小限にとどめ、物理ボタンや各種機器も減らす構成を想定する。いわゆる「less-for-less」の発想で、機能を絞る代わりに価格を大きく下げる戦略と位置付けられる。

事例として挙がっているのがDodgeと新興ブランドのSlateだ。Dodgeのマット・マカレアCEOはニューヨーク・オートショーで、デジタルメーターの代わりにアナログメーターを採用する可能性に触れたうえで、「ラジオは本当に必要なのか。Bluetooth接続のスピーカーで十分ではないか」と語った。

さらに、こうした仕様について「不便に感じる人もいるかもしれないが、消費者自身も気付いていない需要に応える狙いがある」と説明した。

Slateは、より明確に簡素化路線を打ち出している。極めてシンプルな小型電動ピックアップのコンセプトを掲げ、限られた航続距離、簡素な外装、Bluetoothスピーカーを中心とした単純な構成で市場投入を目指している。

ただ、価格が3万ドル前後まで上がれば、「削った分だけ安い」との価値提案が成立するのかどうかが問われることになりそうだ。

3万ドル級の価格帯では、競争の構図はさらに複雑になる。Fordは新型「Universal EV」プラットフォームをベースに、3万ドル未満の電動ピックアップを準備しているとされるが、基本機能まで削る方向に進むかどうかはなお見通せない。

米国の伝統的な自動車メーカーが、3万ドル級のベースモデルEVにどこまでの装備を標準として盛り込むのかによって、市場の受け止め方は大きく変わる可能性がある。

これに対し、中国勢は機能削減ではなく、コスト構造そのものを引き下げることで、低価格と高機能の両立を図っている。ソフトウェア定義型アーキテクチャや電池技術の改良、垂直統合を通じ、仕様を維持したまま価格を下げる戦略だ。

InsideEVsは、「中国勢は機能を落とさず価格を下げる戦略で、グローバル市場でシェアを拡大している」と分析した。

政治面の不確実性も重荷になっている。ドナルド・トランプ米大統領は今年初め、中国の自動車メーカーによる米国内生産を提案したが、条件が多く、実現可能性は低いとの見方が出ている。

米議会では、中国製EVの流入を阻止しようとする動きが続く。共和党のバーニー・モレノ上院議員は、「中国車が米国市場に入ってくるシナリオはない」と強調した。

民主党議員は、短期的に雇用が生まれたとしても、長期的には雇用喪失や国家安全保障上のリスクにつながりかねないと警告している。

業界関係者は、米自動車大手による「less-for-less」戦略について、短期的には価格競争力を確保できる可能性がある一方、装備の充実した低価格EVと真正面から競合した場合、消費者にとっての魅力が薄れるリスクがあると指摘する。そのうえで、米国型の簡素化EVが市場で定着するには、価格と中核的なユーザー体験のバランスが鍵になるとの見方を示した。

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