シリコンバレーの著名投資家マーク・アンドリーセン氏は6日(現地時間)、AIが雇用を奪うとの見方を否定し、むしろ大規模な「雇用ブーム」が起きるとの考えを示した。一方で、米国の雇用指標には強弱が入り交じり、企業の間ではAI活用や事業再編に伴う人員削減も続いている。
ブロックチェーンメディアのCointelegraphによると、アンドリーセン氏はX(旧Twitter)への投稿で、AIが生産性を押し上げれば需要が拡大し、結果として雇用も増えると主張した。
同氏は「AIによる雇用喪失という話はすべて間違っている」とし、「AIは生産性を急上昇させ、需要を押し上げ、大規模な雇用ブームにつながる」と投稿した。AIがただちに人を置き換え、雇用を減らすという単純な見方に異を唱えた形だ。
もっとも、同時期に公表された米国の雇用関連指標は一様ではない。3月の雇用報告では失業率が4.3%で横ばいだった一方、27週以上仕事を得られていない長期失業者は過去1年で32万2000人増えた。表面的な安定とは別に、労働市場の内部では雇用のミスマッチが広がっていることをうかがわせる。
アンドリーセン氏は採用市場の回復にも期待を示している。Business Insiderの報道を引用し、2026年の技術職求人は大きく増加しており、特にソフトウェアエンジニアの求人は6万7000件超と、2023年の約2倍に達したと強調した。コロナ禍後の採用調整や急速な利上げの影響から、企業の採用需要が持ち直しつつあるとの見方だ。
ただ、現場ではAIシフトが人員削減に結び付く事例も相次ぐ。ジャック・ドーシー氏が率いる暗号資産関連企業のBlockは2月末、人員の40%を削減したとされる。AI活用を進める中で、中間管理業務の一部をAIエージェントで代替する試みも進めていると報じられた。Crypto.comも3月中旬、AI統合を理由に人員を12%削減すると発表した。同社は、迅速に方向転換しなければ生き残れないとして、AI転換を生存戦略に位置付けている。
大手IT企業でも、組織再編やAIインフラ投資の過程で雇用への影響が出ている。Oracleは「より広範な組織変革」を理由に、最大3万人規模の削減を進めていると報じられた。ビットコイン採掘インフラをAI向けに転用してきたMara Holdingsも、人員を15%削減したとされる。
こうした中、アンドリーセン氏の発言にはオンライン上で反発も出た。暗号資産インフルエンサーのWendyOは、「仕事を見つけられない米国の中低所得層に同じことを言ってみるべきだ。まともな顧客サービスを受けられない消費者にも」と批判した。
一方、io.netの共同創業者トリ・グリーン氏は、雇用の純増という観点ではアンドリーセン氏の見方が成り立つ可能性があるとしつつ、その前提としてAIツールが少数のプラットフォームに囲い込まれず、広く利用可能である必要があると指摘した。AIの生産性向上が雇用拡大につながるかどうかは、その恩恵が一部に偏らないかに左右されるという見方だ。
結局のところ、争点はAIが雇用をなくすかどうかだけではない。どの仕事が、どの程度の速さで置き換えられるのか、その移行コストを誰が負担するのかが問われている。生産性向上が中長期的に新たな雇用を生む可能性がある一方、移行期の負担が特定の職種や層に集中すれば、労働市場のひずみが一段と広がる恐れもある。