国の豊かさや生活の質を評価するうえで、経済指標だけでは不十分であり、「痛み」を定期的に測るべきだとの提言が示された。痛みは医療上の問題にとどまらず、失業や孤独などの経済・社会環境とも深く結びついているという。
GIGAZINEが6日付で伝えたところによると、ロンドン大学シティ・セントジョージズの心理学者ルシア・マキア氏は、痛みを国レベルのウェルビーイング指標に組み込む必要があると提案した。痛みは単なる健康上の症状ではなく、経済状況や社会的つながり、日常行動と連動する現象だと位置付けている。
マキア氏は2023年、学術誌「Nature Human Behaviour」に寄せたコメントで、政府が生活の質を評価する調査に痛みに関する設問を加えれば、個人の心身の状態をより立体的に把握できると指摘した。
その根拠として挙げられた研究では、痛みが社会全体の変化に応じて増減し得ることが示されている。2022年の論文「Pain trends and pain growth disparities, 2009-2021」は、146カ国・約160万人のデータを分析し、痛みを訴える人の割合が2009年の26.3%から2021年には32.1%へ上昇したと報告した。
こうした増加傾向は高所得国、低所得国の双方で確認され、特に女性や低所得層、低学歴層で伸びが大きかったという。
経済情勢との関連も確認されている。2021年の論文「Physical pain, gender, and the state of the economy in 146 nations」によると、失業率が高い国ほど、痛みを抱える人の割合も高い傾向が見られた。
この傾向は失業者本人に限らず、社会全体で痛みを訴える人の増加として表れ、特に女性で顕著だったとされる。
社会的要因の影響も無視できない。Gallup World Pollのデータを用いた研究では、孤独を感じている人は、そうでない人に比べて痛みを経験する可能性が高いことが分かった。国による差はあるものの、痛みと社会的孤立の関連は幅広く観察されたという。
マキア氏は、痛みを既存指標の代替ではなく補完的な要素として位置付ける。「調査に簡単な質問を追加するだけで、生活の質をより正確に把握できる」とし、「前日に痛みを感じたか」「現在の痛みの強さはどの程度か」といった項目を継続的に測定する手法を提案している。