人民元(写真=Pixabay)

ハーバード大学の経済学者ケネス・ロゴフ氏は、中国の人民元が今後5年以内に主要準備通貨の一角を占める可能性があるとの見方を示した。米ドル中心の国際通貨体制に揺らぎが生じるなか、中国の政策運営と市場整備が進めば、人民元の存在感が一段と高まる余地があると分析している。

ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが5日(現地時間)に報じた。ロゴフ氏は、その最大の要因として、習近平国家主席の下で進む「人民元国際化」政策を挙げた。中国指導部は人民元の国際利用拡大を明確な政策目標に据えており、市場任せではなく国家戦略として押し上げる局面に入ったとの認識を示した。

国際環境も中国にとって追い風だという。ロゴフ氏は、世界の投資家の間で米ドル依存を減らし、資産を分散させる動きが強まっていると指摘。地政学リスクや金融制裁への警戒感が高まるなか、人民元が分散先の一つとして注目を集めていると説明した。

一方で、準備通貨としての地位は政策的な号令だけで確立できるものではないとも強調した。海外投資家の資金を呼び込むには、中国国債市場へのアクセスを一段と広げる必要があるという。あわせて、取引インフラの整備や市場流動性の向上、デリバティブ市場の拡充も欠かせないとした。為替ヘッジや金利スワップなど、グローバル投資家が利用しやすい金融手段の充実も条件に挙げた。

また、資本市場の全面開放が必須の前提条件になるわけではないとの見方も示した。米国でも1970年代までは外国人投資に一定の制約が残っていたが、その間も米ドルは支配的な準備通貨の地位を維持していたと説明。中国が段階的な市場開放を続ける形でも、一定水準の国際化は実現し得るとの考えを示した。

決済分野では、既存の国際決済網への依存をどう下げるかが核心になるとした。ロゴフ氏は、SWIFT中心の構造からの脱却を図り、独自の決済ネットワークを構築する必要があると指摘した。ブロックチェーン技術を活用すれば、既存システムをより低コストで置き換えられる可能性があるとし、人民元国際決済システム(CIPS)がその基盤になり得るとの見方を示した。

暗号資産については、補助的な要素にとどまると位置付けた。ロゴフ氏は、世界の地下経済の規模が少なくとも20兆ドル(約3000兆円)に達すると推計し、この領域ではステーブルコインを含む暗号資産の役割が広がっていると分析した。

ただ、こうした動きは主として非公式経済に限られ、正規の金融システムで米ドルを代替する水準には達していないとの見方を示した。各国政府が規制によって抑え込む権限を持っているためだ。米国の「GENIUS Act」を巡っては、ステーブルコイン規制が緩すぎると批判。発行体の手を離れた後は追跡が難しい点を問題視し、今後の規制は中央銀行デジタル通貨(CBDC)に近い要件へと収れんしていくと予測した。

ロゴフ氏は、人民元の準備通貨化は、中国の政策意思だけでなく、金融市場の開放、決済インフラの整備、そして世界の投資資金の流れが重なって初めて現実味を帯びるとみている。米ドル中心の秩序が短期で崩れるわけではないものの、その前提には変化の兆しが出始めているとの認識を示した。

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