Xの製品責任者ニキタ・ビア氏は、暗号資産関連アカウントに集中するスパム返信について、技術だけで解決するのは難しいとの見方を示した。暗号資産関連の活動の約8割がボットによる可能性があるとも指摘し、対策として「2段階返信制限(2nd-degree reply)」機能を挙げた。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが5日(現地時間)に報じた。ビア氏は「暗号資産アカウントに付くスパム返信を解決できる技術は現時点で存在しない」としたうえで、「暗号資産関連の活動の80%はボットかもしれない」と述べた。現実的な対応策として示したのが、2段階返信制限だ。
この機能は、返信できる対象を「自分のフォロワー」だけでなく「フォロワーのフォロワー」までに限定し、無関係なアカウントの流入を抑える仕組み。Xは現在、この機能をPremium+加入者向けに試験運用しているという。
今回の発言は、Xが進めてきた技術的な検知と抑止を中心とするスパム対策だけでは限界があるとの認識を示した形だ。ビア氏は3月時点では「スパムの経済的な誘因は近く消える」と述べていたが、足元ではツールやアルゴリズムだけでボットと実在ユーザーを大規模に見分けるのは難しいとして、軸足を変えつつある。
Xはこの1年間で約170万件のスパムボットアカウントを削除し、低品質な返信をフィルタリングするためのボタンを導入するなど、対策を強化してきた。さらに2026年1月には、投稿報酬型サービス「InfoFi」アプリを標的に、開発者API方針を変更してアクセス権限を回収した。ビア氏は当時、これらのアプリがAI生成コンテンツや返信スパムを大量に拡散していたと指摘している。
こうした状況に対する業界側の不満も根強い。Solana共同創業者のアナトリー・ヤコベンコ氏は、Xを「ひどいWebサイト」と評しながらも、公開スレッドを基盤とするそのコミュニケーション構造については、最善ではないが現時点では最もましな選択肢だとの認識を示した。スパムやなりすましが深刻化しても、有力な代替先が見当たらない現実を映している。
BeInCryptoはあわせて、約2億8500万ドル(約428億円)規模とされるDrift Protocolへの攻撃事例にも触れた。この事件ではコードの脆弱性ではなく、ソーシャルエンジニアリングによって管理者権限が奪われたとされる。外部からの接触そのものがセキュリティリスクになり得る環境が広がっていることを示す事例といえる。
スパム対策の軸足が検知からアクセス制限へ移るのであれば、Xは今後、公開コミュニケーションの開放性を保ちながらスパムをどう抑えるかという、新たな均衡点を探ることになりそうだ。