米デジタル資産市場構造法案「Clarity法」を巡る上院審議が停滞している。最大の争点はステーブルコインの利払い規制で、Coinbaseが現行条文への反対を表明したことも重なり、4月2日時点で上院銀行委員会のマークアップ(条文審査)は実施されていない。
ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、Clarity法は2025年7月17日に米下院を294対134で通過した。上院での審議入りと法制化が見込まれていたが、審議日程は遅れている。
同法案は、デジタル資産の監督権限の分担を定める内容だ。デジタル・コモディティの現物市場は米商品先物取引委員会(CFTC)が所管し、米証券取引委員会(SEC)は投資契約に該当する資産への監督権限を維持する。これにより、ビットコインはコモディティ、多くのアルトコインは証券に分類される可能性があるとみられている。
上院内の調整を最も難しくしているのは、ステーブルコイン保有者への利払いをどこまで認めるかという点だ。調整案としては、単純保有に伴う利払いは禁じる一方、決済や送金などの利用に応じた報酬プログラムは認める方向が伝えられている。
すでに可決された「GENIUS法」は、ステーブルコイン発行体による利払いを明確に禁じている。
上院銀行委員会は1月にマークアップを予定していたが、直前で延期した。Coinbaseのブライアン・アームストロング最高経営責任者(CEO)が「現行条文は支持できない」と公に表明した後、共和党内でも動揺が広がったためとされる。
業界ロビーの中核とみられてきた企業が公然と異議を唱えたことで、委員会側も採決を急ぐことに慎重になったとの見方が出ている。
3月20日には、共和党のTom Tillis上院議員と民主党のAngela Alsobrooks上院議員が、「保有に伴う利払いは禁止し、取引に連動する報酬は認める」とする大枠合意を公表した。ただ、業界関係者は3月23日の非公開協議の過程で、ステーブルコイン報酬に関する文言が狭すぎるうえ曖昧だとして懸念を示した。
争点は利払い規制だけではない。民主党は、分散型金融(DeFi)に関する条項が、マネーロンダリングや制裁逃れに伴う不正資金リスクに十分対処できていないとみている。
加えて、ドナルド・トランプ米大統領一族によるミームコイン発行やDeFiプロジェクトへの関与を巡って利益相反の問題も浮上している。公職者が個人資格で暗号資産事業から利益を得ることを禁じる倫理規定を法案に盛り込むべきだとの要求も続いている。
政治面の不確実性も加わった。3月26日には、暗号資産とAIを担当していたデービッド・サックス大統領補佐官の退任が確認され、後任を指名しない方針も明らかになった。
CoinbaseのPaul Grewal最高法務責任者(CLO)は4月1日、Fox Businessの番組で「48時間以内にステーブルコイン利払い問題で合意できる可能性がある」と述べた。ただ、仮にマークアップが4月後半に実施されても、その後には上院本会議での60票確保、農業委員会案との一本化、下院案との調整、大統領署名といった手続きが残る。
上院本会議での採決期限も、2026年8月までに限られている。
Clarity法は、単なる規制整備にとどまらず、米国が金融イノベーションをどこまで制度の枠内に取り込むのかを占う試金石となっている。