MegazoneCloudは2日、ソウルで開催したパートナーイベント「ICON 2026」で、企業のAI活用を本格展開するには、モデル性能そのものよりも、ガバナンスやセキュリティ、コンプライアンスを含む運用体制の整備が重要だとの考えを示した。あわせて、AI導入・運用時の管理基準を整理した「Enterprise TRUST Layer」と、エンタープライズ向けAI基盤「AIR Studio V2」を紹介した。
イベントは今回で3回目。MegazoneCloudのグローバル技術パートナー21社と主要顧客が参加し、AI、クラウド、セキュリティを巡る技術動向や実運用事例を共有した。
ヨム・ドンフン代表は、インターコンチネンタル・ソウル・パルナスのグランドボールルームで開かれた基調講演で、「新技術を通じて大きな価値を生み出すには、ガバナンスとセキュリティ、コンプライアンスを管理できる実務的な枠組みが欠かせない」と強調した。
MegazoneCloudは、企業がAI導入後に直面する課題として、ガバナンス、セキュリティ、コンプライアンスへの対応を挙げ、その解決策として「Enterprise TRUST Layer」戦略を提示した。AIの導入から運用までの全プロセスを対象に、Traceability、Regulation、User Access、Standardization、Toolingの5つの基準で管理環境を整える考えだ。
ファン・インチョル最高売上責任者(CRO)は、「AIの成否は、よくできたモデルよりも、安定して運用できる仕組みにかかっている」と述べた。複雑化する規制や各種要件に対応するには、システム設計の段階からそれらを織り込む必要があると説明した。
コン・ソンベ最高AI責任者(CAIO)は、エンタープライズAI OS「AIR Studio V2」を公開した。エージェント型AIを構築、実行、統制するには、中央集約型で管理できるエンタープライズ向けAI基盤が必要だと指摘。AI活用が広がるほど、データの信頼性やセキュリティ、利用量に応じた予算管理などの課題が大きくなるとした。
そのうえで、こうした課題に対応するため、エンタープライズAIガバナンスの枠組み「TRUST」を策定し、AIR Studio V2全体に適用したと説明した。AIR Studio V2は、モデル・データ管理、オーケストレーション、ガバナンス統制機能を単一プラットフォームに統合し、企業がAIをより安全かつ効率的に、拡張可能な形で運用できるよう支援するという。
イベントでは、Korean Air、クラウドセキュリティ企業Wiz、MegazoneCloudのセキュリティ事業を担うHALOユニットによる対談も行われた。テーマは、クラウドセキュリティにおいてツールの追加ではなく、運用構造を見直すことで何が変わるか、というものだった。
Korean Air情報セキュリティ室のキム・ヒョジョンチーム長は、同社におけるWiz導入事例を紹介した。Wizによって、セキュリティチームが優先的に対応すべき実際のリスクを選別しやすくなったと説明。健康診断で緊急対応が必要な項目と継続管理項目を分けるように、マルチクラウド環境で発生する数百件の脆弱性を一つの画面で把握し、リスクを早期に予防する体制を構築できたと述べた。
Wizのマット・ズボレンスキー(Matt Zwolenski)シニアディレクターは、クラウドセキュリティの本質はソリューションを増やすことではなく、複雑な環境の中で何が本当に重要なリスクなのかを見極め、構造的に管理できる可視性を確保することにあると語った。複数チームが共通言語を基盤にシームレスなワークフローを構築し、「セキュリティの民主化」を進める重要性も強調した。
MegazoneCloudでセキュリティ事業HALOを統括するウィ・スヨンユニット長は、セキュリティは単なる防御技術ではなく、事業を止めないための運用設計だと説明した。可視性を確保することで、組織横断の協業体制そのものも改善できるとした。
このほか、IntelやArticul8も講演セッションで、AI導入プロセスにおける実務上の課題と対応策を提示した。
Intelのジェイソン・タン(Jason Tan)アジア太平洋地域のAWS事業開発担当は、多くの企業にとっての課題はAI導入そのものではなく、PoC後にどう安定的に拡張し、運用に乗せるかにあると指摘した。実験段階を超え、実際の業務環境でAIを拡張できるよう、MegazoneCloudと連携していく方針を示した。
Articul8のエドワード・コン(Edward Kong)戦略顧客・グローバルパートナーシップ担当は、多くの企業が生成AIのPoCには成功している一方、本番業務やサービス環境へ広げる段階で、セキュリティやデータ、運用安定性といった現実的な壁に直面していると述べた。AIを提供するだけでは差別化は難しく、企業が持つデータや業務領域の専門性をAIに体系的に組み込み、内製化できるかが重要だと指摘した。