米国の暗号資産市場構造法案「Clarity法」を巡る調整が大詰めを迎えている。最大の争点となっているのは、ステーブルコイン保有者への報酬付与を認めるかどうかだ。業界と銀行が対立するなか、Coinbaseのポール・グリウォル最高法務責任者(CLO)は、合意が近いとの認識を示した。
The Blockが4月1日(現地時間)に報じたところによると、グリウォル氏はFox Businessのインタビューで「合意にかなり近づいている」と述べた。焦点となっているステーブルコイン報酬だけでなく、法案全体の枠組みについても前進があったと強調した。
Clarity法を巡る最大の論点は、ステーブルコインを保有するだけで、プラットフォームが利用者に利息や報酬を付与できるよう認めるかどうかにある。銀行業界はこれに強く反対している。暗号資産プラットフォームが保有残高に利回りを付ければ、従来の銀行預金が大規模に流出する可能性があるとみているためだ。
これに対しグリウォル氏は、預金流出への懸念は実証されていないと反論した。同氏は「理論上はあり得るが、実際に預金流出が起きたことを示す証拠はない」と述べ、この論点を銀行固有の課題と混同すべきではないと主張した。
立法手続きが加速する可能性もある。グリウォル氏は、上院銀行委員会が数週間以内にマークアップ審議に入る可能性があり、その後は本会議での採決につながるとの見通しを示した。一方で、具体的な合意案や日程はなお固まっていないとも語った。
Coinbaseはこれまでも、ステーブルコイン報酬を禁じる条項に公の場で反対してきた。ブライアン・アームストロングCEOも、こうした規制はイノベーションを阻害し、消費者の選択肢を狭めかねないと訴えている。
市場環境は厳しい。The Blockによると、Coinbase株は直近6カ月で約50%下落した。3月31日の終値は172.99ドル(約2万5949円)だった。暗号資産市場全体の低迷が長引くなか、同社の業績や投資家心理にも影響が及んでいるとみられる。
それでもCoinbaseは長期戦略を重視する姿勢を崩していない。グリウォル氏は「会社は次の四半期や来年ではなく、この先10年、25年、50年を見据えている」と述べ、単なる売買の場にとどまらず、金融システム全体を変えるインフラの構築を目指していると説明した。
今後の焦点は、ステーブルコイン報酬に関する条項が法案にどのような形で盛り込まれるかに移る。銀行の預金流出懸念と、業界側の「イノベーションを阻害する」との反発がぶつかるなか、最終的な条文次第では、米国におけるステーブルコインの事業モデルや競争環境が大きく変わる可能性がある。