Cognichipは、チップ設計向けの自社学習モデルとライセンスデータを組み合わせて活用している。写真=Shutterstock

半導体設計向けAIを手掛けるCognichipが、6000万ドルを調達した。設計コストを75%超削減し、開発期間を半減できると訴えるが、現時点では新チップや顧客企業の実績開示は限られており、商用化の進展が今後の焦点となる。

米TechCrunchが4月1日に報じたところによると、今回の資金調達はSeligman Venturesが主導した。Intelの最高経営責任者(CEO)であるリップブ・タン氏も自身のベンチャーファンドを通じて出資し、取締役会に加わった。これにより、Cognichipの累計調達額は9300万ドルとなった。

Cognichipが照準を合わせるのは、半導体設計の長期化と高コスト化だ。先端チップは構想から量産まで通常3〜5年を要し、物理レイアウト前の設計工程だけでも最長2年かかるという。設計の複雑化も進んでおり、例えばNVIDIAの最新GPUアーキテクチャ「Blackwell」は約1040億個のトランジスタを搭載するなど、設計と最適化の難度は一段と高まっている。

こうしたボトルネックに対し、同社はAIで設計工程全体の生産性を引き上げる戦略を掲げる。共同創業者兼CEOのファラズ・アラエイ氏は、AIが高品質なコード生成を可能にする段階まで進化したとしたうえで、半導体設計でも大幅な効率化が可能だと説明した。同社は自社技術によって、チップ開発コストを75%以上削減し、開発期間も半分超短縮できるとしている。

技術面での差別化要因として挙げるのが、汎用の大規模言語モデル(LLM)ではなく、設計に特化した専用モデルだ。半導体設計データは知的財産(IP)保護の観点から外部公開が限られるため、同社は合成データとライセンスデータ、独自のセキュアな学習プロトコルを組み合わせてモデルを構築したという。顧客の機密データを外部にさらさず学習できる仕組みだとしている。

データ確保が難しい領域では、オープンソースのエコシステムも活用する。Cognichipは、サンノゼ州立大学の学生向けハッカソンで、オープンソースのチップアーキテクチャであるRISC-VベースのCPU設計モデルを披露し、技術の実現可能性を示したとしている。

もっとも、商用化の状況はなお不透明だ。Cognichipは自社システムで設計した新チップを公表しておらず、協業先の顧客企業名も明らかにしていない。製品や顧客実績の開示がない段階での大型調達であることから、今後は実際の成果検証が求められそうだ。

競争環境も厳しい。Cognichipは、EDA大手のSynopsysやCadence Design Systemsに加え、AIを軸に半導体設計市場への参入を狙う新興企業とも競合する。Alpha Design AIやChipAgentsAIも大型資金を確保し、市場開拓を進めている。

投資家はこうした動きを、AIインフラを巡るスーパーサイクルの一部とみている。Seligman Venturesのマネージングパートナー、ウメシュ・パドバル氏は「現在AIインフラに流入している資本は、40年の投資経験の中でも最大規模だ」と述べ、「半導体・ハードウェア分野のスーパーサイクルは、Cognichipのような企業にも追い風になる」との見方を示した。

AIの適用領域がソフトウェア開発から半導体設計へ広がる中、Cognichipが産業構造の変化を実際に促せるかが問われる。技術実証を商用実績につなげられるか、そして既存大手との競争の中で存在感を示せるかが、次の焦点となる。

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