Binance共同創業者のチャンポン・ジャオ(CZ)氏は、量子コンピュータが暗号資産の安全性を脅かすとの見方について、「過度に心配する必要はない」との認識を示した。一方で、実際の対応ではポスト量子アルゴリズムへの移行や、ビットコイン創設者サトシ・ナカモトの保有分の扱いが論点になると指摘した。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが4月1日(現地時間)に報じたところによると、ジャオ氏はX(旧Twitter)への投稿で、量子コンピュータ時代への備えとして「量子耐性(ポスト量子)アルゴリズム」へのアップグレードを提案した。暗号資産が取るべき基本対応は、こうした量子耐性技術への移行だとの考えを示している。
ただ、分散型ネットワークでアップグレード方針を調整するのは容易ではないとも述べた。採用するアルゴリズムを巡って意見が割れれば、一部のブロックチェーンではチェーン分岐(フォーク)につながる可能性があるという。
さらに、機能していないプロジェクトの一部はアップグレード自体が行われない可能性があるとしたほか、新たなコードの導入によって短期的に別のバグやセキュリティ上の問題が生じる恐れにも言及した。セルフカストディの利用者については、新しいウォレットへの資産移管が必要になる可能性があると説明した。
ジャオ氏が特に注目したのは、サトシ・ナカモトの保有分とされるビットコインだ。サトシは数十年にわたり動きのない100万BTC超を保有していると推定されており、量子技術が実用段階に達するまでこれらが休眠状態のままであれば、将来の攻撃者による奪取を防ぐため、コミュニティが凍結やバーンを検討する余地があるとの見方を示した。
もっとも、サトシのアドレスを他の初期保有者のものと明確に区別して特定するのは難しいとも付け加えた。その上で、計算資源の優位性は依然として重要だとしつつ、「暗号資産は量子時代以降も存続する」と述べた。
今回の発言の背景には、楕円曲線暗号(ECC)を破るのに必要な資源が、従来想定より少なくて済む可能性を示す研究が相次いでいることがある。Google Quantum AIのホワイトペーパーは、ECCの解読に必要な資源が従来見積もりを大きく下回る可能性を示した。
また、CaltechとOrratomicsの研究では、Shorアルゴリズムを暗号解読上意味のある規模で、1万量子ビットでも実行できる可能性が示された。
今後の焦点は、量子コンピュータの脅威がいつ現実化するかだけでなく、主要ネットワークがそれまでにどこまで具体的な対応体制を整えられるかに移りつつある。とりわけビットコインのようにネットワーク規模が大きく、歴史的な保有分の問題も抱える資産では、セキュリティー、ガバナンス、市場の信認を巡る議論がさらに広がる可能性がある。