ステーブルコインは発行残高よりも、資金がどれだけ頻繁に、どこへ流れるかが重要な指標になりつつある。写真=Shutterstock

ステーブルコインが有望な技術という段階を過ぎ、目立たない金融インフラとして定着しつつある。市場の関心も、採用拡大そのものから、そこから生まれる収益を誰が得るのかという構造の問題へ移っている。

Cointelegraphが3月31日に報じた。オープントレード共同創業者のジェフ・ハンドラー氏は寄稿で、「2026年の核心的な問いは、実際に誰が手数料を取り、その価値を享受するのかだ」と指摘した。

同氏によると、ステーブルコインの変化の本質は、単なる普及拡大ではなく、既存の金融活動への組み込みにある。特定のアプリやサービスが急成長して大衆化を主導したのではなく、デジタルドルが企業金融や決済の裏側で機能する運転資金として定着し、グローバル金融システムの「配管役」として根を下ろしたという見方だ。

その結果、評価軸も変わりつつある。これまで業界では時価総額やシェアが重視されてきたが、インフラとしての実態を測るうえでは、velocity、すなわち資金回転率のほうが重要だと同氏は主張する。時価総額は静的な指標にすぎず、本当に重要なのは資金がどれだけ速く循環するかだという。

データもこうした変化を裏付ける。寄稿によれば、2025年のステーブルコイン総取引量は33兆ドルを超え、前年比72%増となった。供給量が数千億ドル規模にとどまる一方で取引量が大きく膨らんでいるのは、同じ資金が決済や送金、財務運用など複数の用途で繰り返し使われているためだとしている。

地域別では、中南米で実利用の進展が目立つ。アルゼンチンとブラジルでは、オンチェーン活動に占めるステーブルコイン関連の比率がそれぞれ61.8%、59.8%に達した。投資対象にとどまらず、高インフレ下での生活防衛や価値保存の手段として機能していることを示している。

これに対し、米国と欧州では、ステーブルコインはなお利回り確保の手段や取引決済ツールとして受け止められる傾向が強い。規制や税制を巡る議論が続く間に、一部の新興国では法定通貨の代替として使われる流れが現実味を帯びているという。

一方で、取引が拡大するほど、その過程で生まれる経済的価値がどこに帰属するのかが重要になる。ハンドラー氏は、現在の市場構造を、発行体、取引所、カストディアンへと収益が積み上がる「収益ピラミッド」と表現した。

例えば発行体は、準備資産の運用や流通パートナーとの提携を通じて収益を得る。ハンドラー氏はTetherを例に挙げ、従業員1人当たり収益で世界2位級の高収益企業と評価されている点にも言及した。取引所は清算や内部ルーティングで手数料を取り、銀行やネオバンクもトークン化預金やオンチェーン決済を通じて新たな収益源を確保しているという。

規制当局は直接収益を得る立場ではないものの、ライセンス制度やコンプライアンス要件を通じて、誰がこの市場で利益を上げられるかを左右する重要な存在になっている。実際、中南米ではオンランプ・オフランプ、ウォレット、取引所の競争が激しくなっており、資金回転率を高める方向で各プレーヤーの利害が一致していると分析した。

同氏は、持続可能なエコシステムの構築には、インセンティブ設計の見直しが欠かせないと訴える。仲介層に収益が集中する現状を維持するのではなく、実際に取引を生み出す利用者にも価値の一部を還元すべきだという主張だ。

また、ステーブルコインがもはや「技術」として意識されなくなり、完全に見えないインフラになったときこそが、本当の転換点になるとの見方も示した。

2025年が、ステーブルコインに数十兆ドル規模の価値の流れを処理する力があることを示した年だったとすれば、2026年は、その流れを誰が取り込み、主導権を握るのかを巡る競争が本格化する年になりそうだ。

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