米軍がイランに地上部隊を投入する水準まで戦闘が拡大した場合、ビットコイン(BTC)は安全資産として買われるより、まずリスク資産として大きく売られる可能性が高い――。こうした見方を、ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが3月31日付で伝えた。
同メディアは、予測市場Polymarketのベット動向や過去の戦争局面を踏まえ、暗号資産相場を左右するのは戦争そのものではなく、戦争がもたらす金利と流動性環境の変化だと分析した。
報道によると、市場ではすでに地政学リスクの織り込みが進みつつある。Polymarketでは、イランを巡る戦争開始のタイミングを的中させたとされる一部参加者が、「米軍の対イラン地上部隊投入」シナリオへのベットを積み増しているという。
あるアカウントについては、「米国の攻撃9件を正確に予測した」と紹介されており、3月31日時点でも関連イベントに大きな資金を投じているとされた。
BeInCryptoが重視するのは、戦争の有無そのものではなく、その結果として生じるマクロ環境だ。同メディアは「最大の影響は戦争自体ではなく、戦争がインフレと金利をどう動かすかにある」と指摘した。
地上戦が現実化すれば、原油高を起点に期待インフレが高まり、国債利回りの上昇と流動性の縮小につながる可能性が高い。この構図は、株式や暗号資産といったリスク資産にとって重荷になりやすい。
過去の事例としてまず挙げたのが、2003年のイラク戦争だ。当時の米株式市場では、開戦前から「War Discount(戦争ディスカウント)」が意識されていた。戦争や地政学的対立を背景に、国家の経済や株式、通貨の価値が本来より低く評価される状態を指す。
その後、侵攻開始後に最悪シナリオが直ちには現実化しなかったことで不確実性が和らぎ、S&P500は約4%上昇した。原油価格はむしろ下落し、金利も低下したことで流動性環境が改善し、株式相場の反発を支えた。
一方、2022年のロシアによるウクライナ侵攻の初期局面では異なる動きがみられた。米国株は日中の急落後に持ち直したが、ビットコインは約7%下落し、1カ月ぶりの安値を付けた。
BeInCryptoは、これは戦争初期の「ヘッドライン・ショック」の局面で、ビットコインが金のような安全資産ではなく、ハイテク株に近い高リスク資産として取引されたことを示すものだとみている。
こうした2つの事例を踏まえ、同メディアはビットコインの「war beta(戦争ベータ)」は金とは異なると結論付けた。大規模な戦争ショックが発生した直後の24〜72時間はニュースヘッドラインが相場を支配し、ビットコインはとりわけ高リスク資産のような値動きになりやすいという。
株式市場は、戦争下でも恐怖感を織り込み過ぎていた場合には早い段階で反発することがある。ただ、ビットコインは流動性への感応度が高く、反発にはより厳しい条件が必要になりやすいと説明した。
今後の展開については、3つのシナリオが考えられるとしている。第1に、衝突が短期かつ限定的にとどまる場合は、ビットコインは初期下落の後、不確実性の後退を受けて反発する余地がある。
第2に、長期の地上戦に発展した場合は、高金利と高原油の環境が続き、下押し圧力も長引く可能性が高い。第3に、全面戦争に拡大した場合は、世界的なリスクオフが一段と強まり、より深い調整につながる可能性がある。
イラン側の強硬姿勢も変数とされる。アッバス・アラグチ外相は「米国との交渉結果は信頼していない。信頼の水準はゼロだ」と述べ、緊張緩和への期待を後退させた。
BeInCryptoは、こうした発言が市場に短期的な衝突ではなく、事態拡大リスクをより強く意識させる要因になり得るとみている。
そのうえで同メディアは、「ビットコインは戦争ニュースに単純に上昇で反応する資産ではなく、戦争が引き起こす金利と流動性環境の変化に敏感な資産に近い」と指摘した。地上戦の拡大が国債利回りを押し上げ、金融緩和期待の後退につながれば、短期的には暗号資産市場にとって不利な環境が強まる可能性が高いとしている。