量子コンピュータの進化が想定を上回るペースで進んだ場合、BitcoinやEthereumなど主要ブロックチェーンの安全性が短期間で揺らぐ可能性がある――。Google Quantum AIが主導した最新研究はこうしたリスクを指摘し、XRP Ledger(XRPL)を量子耐性技術の実験を進める事例の一つとして取り上げた。
ブロックチェーンメディアのThe Crypto Basicが3月31日に報じたところによると、この研究には学界に加え、Ethereum Foundation(EF)も参加した。報告書は、強力な量子コンピュータが実用段階に達した場合、ブロックチェーンの中核暗号技術である楕円曲線暗号(ECC)が短時間で解読される可能性があると指摘している。
研究が重視したのは、その脅威が現実化する「時期」だ。量子計算能力が一定の臨界点を超えると、ECCを解読するコストは急低下し、十分な性能を持つ量子コンピュータが登場すれば、攻撃が数分で成立する可能性もあるとした。
特に報告書は、取引処理の途中を狙う「on-spend」攻撃のシナリオを示した。取引が最終確定する前に内容が露出し、その間に資産が奪われるおそれがあるという見立てだ。
もっとも、研究チームは具体的な攻撃手順を提示したわけではないとしている。その代わりに、ゼロ知識証明を用いて、こうしたリスクが成立し得ることを検証したと説明した。
今回の研究が注目を集めた理由の一つは、XRPLがポスト量子対応の事例として言及された点にある。報告書は、XRPLを量子耐性技術の実験を進める数少ないブロックチェーンの一つとして紹介し、関連研究が進んでいるとした。
この内容は、XRPLのバリデーターとして知られるVetがコミュニティ内で共有し、議論が広がった。
報告書は、チェーンの設計によって量子リスクの大きさに差が出る可能性にも触れている。EthereumやSolanaなど一部ネットワークでは、公開鍵が露出しやすい設計や旧来のアカウント構造によって、時間の経過とともにリスクが高まる可能性があるという分析だ。
これに対しXRPLは、アカウントを維持したまま暗号鍵を更新できる鍵ローテーションに対応している点が、比較的柔軟な対処手段として評価された。ただし報告書は、こうした仕組みだけで量子脅威を完全に解消できるわけではなく、将来のアップグレードに向けた土台にとどまると位置付けている。
研究はさらに、スマートコントラクトやトークン化資産の拡大に伴って、攻撃側のインセンティブが高まる可能性も指摘した。とりわけ、現実資産(RWA)など高い価値を持つ資産を扱うネットワークほど、セキュリティリスクは大きくなり得るとしている。
その文脈では、XRPLが米国債などの資産トークン化で活用範囲を広げている点にも言及した。
市場やコミュニティの関心は、量子脅威への先回りした対応の必要性に集まっている。XRPLが相対的に準備を先行させているとの見方がある一方で、研究自体は特定のネットワークがすでに量子リスクから自由だとはみていない。
報告書は、ポスト量子セキュリティが遠い将来の課題ではなく、すでに現在進行形の論点になっていると強調した。
そのうえで、ブロックチェーン業界全体に二つの問いを投げかけている。量子計算の進展が従来の想定をどこまで上回るのか。各ネットワークがその変化にどれだけ迅速かつ柔軟に対応できるのか、という点だ。
あわせて、鍵ローテーションのようなアカウント構造の違いが、ポスト量子時代への移行における対応速度やコスト差につながるかどうかも、重要な変数になるとした。