OpenAIが動画生成AI「Sora」の提供を2026年3月で終了する方針を固めた。高い運用コストに対して収益化が進まず、IPOを視野に入れる中で、経営資源を企業向け事業や次世代AIモデルに振り向ける狙いがあるとみられる。
2026年3月31日付のGIGAZINEは、米Wall Street Journal(WSJ)の報道を引用し、Soraは多額の運用コストを抱えながら十分な収益を生み出せず、事業上の優先順位が低下していたと伝えた。
Soraは、テキスト入力から動画を生成できる無料アプリとして提供された。人物を動画内に登場させる機能も備え、招待制ながらアプリストアの上位に入るなど、公開直後から利用を集めた。一方で、普及とともに著作権侵害やディープフェイクを巡る論争も広がった。マーティン・ルーサー・キング・ジュニアに関するディープフェイク動画が大量に生成され、遺族が抗議した事例や、著作権で保護されたコンテンツが無断で生成される問題が繰り返し指摘されたという。
OpenAIは改善策を講じるとともに、The Walt Disney Companyとの契約など、同意に基づくコンテンツ活用モデルも模索してきた。ただ、事業性を巡る根本的な課題は解消できなかった。WSJによると、Soraは公開から数カ月で同社の財務上の重荷となった。とりわけIPOを控え、収益性の高いサービスに経営資源を集中する戦略が強まる中で、その位置付けは後退していた。
利用動向も鈍化していた。関係者の話として、公開直後には約100万人規模だった利用者数が50万人未満に減少したほか、1日当たり約100万ドル(約1億5000万円)の損失が発生していたとされる。計算コストの高さと収益化の弱さが重なり、持続性に疑問符が付いていた格好だ。
計算資源の再配分も、終了判断を後押しした主要因とされる。OpenAIは「Spud」をコードネームとする次世代AIモデルの開発を最終段階まで進めており、これに加えてコーディング関連や企業向け製品群に、より多くの計算資源を振り向けているという。
今後は、エージェント型AIとスーパーアプリ戦略に注力する方針だ。ソフトウェア開発、データ分析、旅行予約などの業務を自律的にこなすAIツールを、単一のプラットフォームに統合する構想を指す。
組織面でも変化が出ている。サム・アルトマンCEOは、Soraの開発チームに対し、今後はロボティクスなど長期研究分野へ軸足を移すよう求めたと伝えられている。
今回の判断は、生成AI業界が単なる技術デモの段階を過ぎ、採算性とコスト構造を基準に再編へ向かっていることを示す事例といえそうだ。とりわけ動画生成のように計算資源を大量に消費するサービスは、明確な収益モデルと規制対応を欠けば継続が難しい可能性がある。あわせて、OpenAIが上場準備を進める過程で、実験的な消費者向けサービスよりも、企業向けソリューションと長期的な技術開発を重視する姿勢を鮮明にしていることもうかがえる。