量子コンピューターは暗号資産市場の潜在リスクとして改めて注目されている。写真=Shutterstock

Googleやカリフォルニア工科大学(Caltech)の研究者らが、ビットコインやイーサリアムの暗号の安全性を脅かし得る量子コンピューターの必要規模について、従来より大幅に低い試算を示した。これを受け、市場では暗号資産の「量子リスク」への警戒感が再び強まり、ビットコインが上値の重い展開となる一方、量子耐性を掲げるQuantum Resistant Ledger(QRL)には買いが集まった。

3月31日付のCoinDeskによると、GoogleとCaltechの研究者らによる最新の論文が、暗号資産のセキュリティを巡る懸念を改めて浮上させた。

焦点となっているのは、暗号の解読に必要とされる量子ビット数の見積もりが大きく切り下がった点だ。Googleの研究者は、ビットコインの暗号を破るには50万量子ビット未満の量子コンピューターでも可能になる余地があると指摘。これまで広く語られてきた「数百万量子ビット」規模の試算を大きく下回った。

さらに、Caltechと量子スタートアップOratomicによる別の研究では、約2万6000量子ビット規模のシステムで、ビットコインとイーサリアムの暗号標準を約10日で無力化できる可能性が示された。

こうした研究結果を受け、暗号資産市場の基盤を揺るがしかねないとの見方も出ている。Capriole Investments創業者のチャールズ・エドワーズ氏は、量子ハッキングが現実になれば、「コードを信頼せよ」という暗号資産の中核的な前提や、「ハードマネー」としての価値提案が損なわれかねないと指摘した。

一部では、ビットコインの供給量全体の約25〜30%が量子攻撃に対して脆弱となる可能性があるとの分析もある。

もっとも、業界内ではリスクが直ちに顕在化するわけではなく、時間軸の問題だとの見方もある。Dragonflyのマネージングパートナー、ハシブ氏は、現時点での攻撃はなお理論段階にあるとしつつも、ネットワークに一種の期限を突き付ける要因になると説明した。

その上で、ビットコインは2029年前後までに量子安全技術へのアップグレードを検討する必要が生じる可能性があるとの見通しを示した。

相場もこうした警戒感を一部織り込んだ。ビットコインはアジア時間の取引で6万8000ドル台に乗せた後、6万6250ドル前後まで反落した。

CoinDeskは、需要の鈍化に加え、インフレを映した債券の実質金利上昇が、ビットコインのような高リスクの新技術資産の投資魅力を低下させていると分析した。

一方、量子リスクへの関心が高まる中、量子耐性を打ち出すプロジェクトには資金が向かった。QRLのネイティブトークンは24時間で約40%上昇し、1.62ドルまで値を上げた。時価総額は約1億2700万ドルと集計された。

QRLは、量子コンピューティング環境でも安全性を維持できるブロックチェーンを目指すプロジェクトで、外部監査を受けたエンタープライズ向けプラットフォームをうたっている。

技術面での違いは署名方式にある。ビットコインが楕円曲線暗号(ECC)に依存するのに対し、QRLはXMSS(eXtended Merkle Signature Scheme)を基盤とする量子安全な署名方式を採用している。

XMSSはワンタイム署名の構造を用いる方式で、量子コンピューターでも解読が難しいとされ、ポスト量子暗号の有力候補の1つに挙げられている。

今回の論点は大きく2つある。1つは、量子リスクが地政学リスクなどのマクロ要因と重なり、ビットコインの投資家心理をどこまで冷やすかという点。もう1つは、懸念が広がるほど、QRLのような量子耐性プロジェクトが代替先として再評価される可能性がある点だ。

量子コンピューティングを巡る脅威は依然として理論段階にある。ただ、市場はすでにその可能性を相場や投資テーマに織り込み始めている。

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