AI産業の電力需要が急拡大し、エネルギー政策やサプライチェーン、金融市場にまで影響を広げている。AI向けデータセンターの増設が進む一方、課題の中心は半導体の性能競争から、電力網への接続や関連設備の調達へと移りつつある。
3月31日付のCryptopolitanによると、データセンター拡大の加速で、電力網への接続遅延が長期化している。地政学リスクに加え、大規模投資に見合う収益を確保できるかどうかへの懸念も強まっている。
OpenAIのサム・アルトマンCEOは、同社が「毎日1GWの電力を必要としている」と述べた。米国で前年1年間に新設された発電設備が約53GWだったことを踏まえると、AIが求める電力規模の大きさがうかがえる。
投資額も膨らんでいる。Amazon、Microsoft、Alphabet、Metaの4社は、2026年にデータセンターと半導体関連へ約6300億ドルを投じる見通しだ。クラウドインフラ大手7社ベースでは、合計8110億ドルに達する。
4社は世界で約600カ所のデータセンターを運営しており、さらに544件が計画段階か建設中とされる。
ただ、課題は建設そのものではなく、稼働に至るまでのインフラ確保にある。最新の100MW級AIデータセンターの建設費は40億ドル超に上り、このうち約7割をサーバーとプロセッサが占める。
一方、ロンドンなどの大都市では、電力網への接続に最長10年を要する可能性がある。企業は許認可を得やすい米テキサス州の一部などへ立地を移す動きを見せているが、そうした地域では熟練人材が不足しており、従業員向け住宅コミュニティの整備を支援した事例もあるという。
設備面でも逼迫が進む。欧州では変圧器の納期が最長100週に達し、昨年はデータセンタープロジェクトの約60%で3カ月を超える遅延が発生した。
基礎工事のコンクリート打設では88%の案件で問題が生じ、冷却システムと火災警報設備の設置も78%で遅延要因となった。NVIDIAのBlackwellや次世代のRubinアーキテクチャでは発熱量が増えるため、冷却方式は空冷から水冷へ移行が進んでいる。次世代サーバーラックの電力需要に対応するため、固体変圧器の採用も増えているという。
さらに、中東情勢の不安定化も新たなリスク要因となっている。多くのデータセンターは非常用電源としてディーゼル発電機に依存しており、燃料供給が脅かされる可能性があるためだ。S&P Global Visible Alphaのメリッサ・オット氏は、原油価格の高止まりが長期化すれば、株式市場が大きく調整する恐れがあると警告した。
インフラ投資の収益性も低下する見通しだ。Alphabetの投下資本利益率(ROIC)は昨年の51%から2030年には約36%へ、Microsoftも2020年の95%から2030年には36%まで低下すると見込まれている。
一方で、一部の専門家は発電所の新増設よりも、既存の電力網に残る遊休容量を効率的に活用すべきだと指摘する。欧米主要国の電力網の平均稼働率は約30%にとどまり、年間を通じて限界に達するのは約100時間にすぎない。こうした余力を適切に管理すれば、新たな発電設備を増やさなくても追加で100GWを確保できるとの分析だ。
実際、GridCAREとPortland General Electricは、AIを使って再生可能エネルギーの発電量を予測し、電力に余裕のある時間帯や地域へデータセンターの処理を移す手法を試験している。分析では、1GW級データセンターが混雑していない時間帯の電力網容量を活用すれば、一般家庭の電気料金を最大5%引き下げられる可能性があるという。