イランのモハンマド・バゲル・ガリバフ国会議長が29日、ドナルド・トランプ米大統領の発言を相場の「逆指標」とみなすべきだと訴え、市場関係者の注目を集めている。トランプ氏が最終的に強硬姿勢を後退させることを前提にした「TACO(Trump Always Chickens Out)」戦略に対しても、見直しを促す材料として受け止められている。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoによると、ガリバフ氏はSNSへの投稿で、トランプ氏の事前発言は政策シグナルではなく「利食いのタイミング」と捉えるべきだと主張した。とりわけエネルギー市場では、逆張りの発想が必要だとの見方を示したという。
TACOは、トランプ氏が関税強化や軍事行動に踏み込む姿勢を示した後、実際には一歩引くとの見方を前提に、市場下落時に買い向かう手法を指す。2025年にはこの戦略が相場の定石として繰り返し機能し、投資家の間で広く意識されてきた。
ただ、足元では対イラン情勢の緊張が高まり、その前提が揺らいでいる。トランプ氏がイランのエネルギーインフラへの攻撃を延期した後も、市場は安心感を取り戻せず、かえって先行き不透明感が強まった。延期が緊張緩和のサインではなく、追加衝突の可能性を示すものと受け止められ始めたためで、「最終的には後退する」との見方が弱まりつつあるとの指摘が出ている。
マクロ環境も相場の重荷となっている。アトランタ連銀のGDPNowは、米国の1〜3月期成長率見通しを従来の3%台から2%前後へ引き下げた。あわせて利下げ期待も急速に後退しており、市場では高金利の長期化を織り込む動きが強まっている。米10年債利回りも4.4%を上回り、市場全体の緊張感を高めている。
ガリバフ氏はさらに、米国債を買い入れる金融機関が軍事的な標的になり得ると警告し、債券市場にまで地政学リスクが波及する可能性に言及した。単なる政治的レトリックにとどまらず、金融市場と地政学リスクがより直接に結び付く局面に入ったとの受け止めも広がっている。
市場関係者の間では、今回の局面が既存の投資戦略の限界をあらわにしたとの見方も出ている。TACO戦略が機能してきた背景には、中国や欧州連合(EU)、カナダといった主要な交渉相手が対話を通じて対立を和らげてきたという前提があった。しかし、イランは軍事的打撃の後も交渉に応じない強硬姿勢を維持しており、これまでとは異なる展開になっているという。
ブレント原油価格は1バレル110ドルを超え、エネルギー市場の不安も強まっている。ホルムズ海峡の封鎖懸念も重なり、市場ではこれを一時的なイベントではなく、構造変化の兆しとしてみる向きが増えている。米10年債利回りが再び4.5%を上回るようなら、ホワイトハウスがどのような政策対応を取るかも重要な変数として意識されそうだ。
BeInCryptoは、トランプ氏の発言パターンだけを手掛かりにした単純なトレーディング戦略は、もはや機能しない可能性があると分析した。地政学リスクが金融市場に及ぼす影響はより直接的かつ構造的になっており、投資戦略全体の再調整を迫る局面に入ったとの見方を示している。