ChatGPTやClaudeなど生成AIの普及を受け、企業の検索最適化戦略が転換期を迎えている。これまで20年以上にわたり検索エンジン最適化(SEO)に注力してきた企業の間では、Generative Engine Optimization(GEO)やAnswer Engine Optimization(AEO)への関心が高まっている。
2025年8月のMcKinseyの調査では、回答者の半数がAIベースの検索エンジンを積極的に利用していることが分かった。McKinseyは、2028年までにユーザーがAIベースの検索を通じて見つけた製品・サービスに7500億ドル(約11兆2500億円)を支出すると見込んでいる。
AIチャットボットが質問に対して直接答えを返すようになったことで、企業にとっては検索結果で上位表示を狙うだけでなく、AIの回答で参照される情報源になる重要性が増している。ただ、Google検索のSEOのように、企業側が拠り所にできる明確な基準や定石はまだ十分に確立されていない。AIがどのサイトを参照し、どの情報を推奨するのかも見えにくいのが実情だ。
その一方で、AIの挙動を分析する専門家は増えており、AIに拾われやすい情報の特徴も徐々に明らかになってきた。The Wall Street Journal(WSJ)は最近の報道で、こうした知見にはいくつかの共通点があると伝えている。
まず、生成AIの台頭によって従来型検索が不要になったわけではない。AI検索が急速に広がる一方で、多くの利用者は依然として従来の検索エンジンを使い、リンクをクリックして情報を探している。AIチャットボット経由の検索でも、裏側ではWeb検索が使われるケースが多い。ノースウェスタン大学でデジタルマーケティングとビジュアル・コミュニケーションを担当するケリー・カトラー氏は、「AIはSEOの終わりではない。次世代のSEOだ」と述べた。
ただし、評価のされ方は変わりつつある。従来のSEOでは、権威性の高いサイトからの被リンクが、他サイトでの多数の言及よりも重視される傾向があった。一方、WSJによると、AIチャットボットはReddit、G2、Quoraなどに蓄積されたレビューやコメントといったユーザー生成コンテンツを重視する傾向があるという。
デジタルマーケティング企業Semrushの最高マーケティング責任者(CMO)、アンドリュー・ワーデン氏は、「AI検索は、ユーザーがブランドについて何を語っているかという情報と切り離せない」と指摘する。その上で、「AIは実体験に基づく情報、具体性、継続的に更新される話題を好む。ブランドに関する会話が多いほど、AIの回答にそのブランドが含まれる可能性も高まる」と語った。
WSJは、こうしたAI上の可視性を高めるため、企業が顧客の質問に直接答えたり、率直なレビュー投稿を促したりするなど、オンラインでの顧客接点を広げる動きが強まる可能性があると報じた。
加えて、AIが参照しやすいページ構成を整えることも重要になる。企業はAI検索を意識してWebサイトを見直す必要があるという。従来のSEOでは小見出しを多く配置する構成が有効とされてきたが、AIチャットボット向けには、これに加えて箇条書き、FAQ、要点を短くまとめた「TL;DR(Too Long; Didn’t Read)」のような要約が有効だとWSJは伝えている。
文脈情報も重要な要素だ。利用者はAIチャットボットに「探して」と依頼する際、用途や条件、利用シーンなどを含めて質問することが多い。そのためAIも、単なる製品一覧より、こうした文脈を添えた情報を参照しやすい可能性がある。
従来のSEOでは、Googleで有効な施策がBingやYahooでもおおむね通用し、業界をまたいでも再現しやすかった。だがAI検索では、こうした共通ルールが当てはまりにくいようだ。
AI検索最適化を手掛けるProfoundの共同創業者兼CEO、ジェームズ・キャドウォラダー氏は、「重視される要素はプラットフォームごとに異なる」と説明する。「例えばGeminiはChatGPTに比べてYouTubeの結果を大幅に多く取り込み、参照元の幅もより広い」と述べた。
また、従来の検索エンジンでは、企業提供のスポンサード記事やブログ記事は相対的に評価が低くなりやすかったが、AIでは事情が異なる可能性がある。デジタルマーケティング代理店Wpromoteのシニアバイスプレジデント、レイチェル・クライン氏は、「AIはこうしたコンテンツも他の記事と同じように扱っているようだ」と話した。
AI時代には、企業のWebサイトや自社ブログなどのオウンドメディアの重要性が高まっているとの見方もある。
Axiosは最近、Penta Groupの分析レポートを引用し、LLMが引用するコンテンツの約60%が企業の自社制作コンテンツだったと報じた。伝統的なメディアの比率は約25%で、残りはユーザー生成コンテンツやサードパーティプラットフォームが占めたという。検索ではアーンドメディアが28%、オウンドコンテンツが22%を占めており、AIと従来検索では構成比に違いがあるとしている。
Penta Groupは、LLMがマーケティング色の強いコピーよりも、ジャーナリズムに近い体裁のコンテンツを好む傾向があると分析する。明確な見出し、FAQ形式、著者名の明記、定期的な更新は、LLMに引用される可能性を高める要素として挙げられる。コンテンツの構造や鮮度は、企業側が比較的コントロールしやすい要素だとしている。