ウォール街で進むオンチェーン化が、資本市場インフラの再編を促している

ウォール街の金融機関が、ブロックチェーンの検証段階を終え、本格導入へと舵を切っている。取引所や清算機関、電子取引プラットフォームなど、グローバル資本市場の中核プレーヤーが相次いでオンチェーン活用を進めている。

こうした動きについて、米Andreessen Horowitz(a16z)の暗号資産投資部門a16z Cryptoでオペレーティング・パートナーを務めるジェイソン・ローゼンタル氏は、自社サイトに掲載した文章で「最近のウォール街の動きは、30年前の電子取引への転換以降、資本市場における最大のインフラ刷新だ」と評価した。

同氏は、金融機関がオンチェーン・インフラに注目する理由について、「資金循環の速度を大きく高められると見ているためだ」と説明した。その効果は、電子取引の普及が市場構造を大きく変えた過去を見れば明らかだとする。

ローゼンタル氏によると、ECN(電子通信ネットワーク)やオンライン証券が登場する以前は、1件の取引成立に数分を要した。スプレッドは1/8ドル刻みで提示されるなど大きく、ブローカーの利幅も厚かった。市場へのアクセスも、地域や資本規模によって制約されていた。

その後、電子取引の普及でスプレッドは急速に縮小した。手数料も1回150ドルから9.95ドルへ、最終的には無料にまで低下し、取引量と個人投資家の参加は大きく拡大した。2000年代の市場は1990年代とは様相を一変させたという。

同氏は、トークン化がこの変化をグローバル金融全体に広げる可能性を持つとみる。トークン化資産は、国債やApple株、不動産登記などの実物資産を、ブロックチェーン上でプログラム可能なトークンとして記録したデジタル表現だ。時間や場所を問わず移転でき、即時決済にも対応しやすい。

ローゼンタル氏は、オンチェーン化によって「24時間365日動く市場、即時決済、国境を越えた流通、従来は大口取引でしか扱いにくかった資産の小口化、営業時間外でもリアルタイムに動かせる担保」が可能になると指摘する。その結果として、市場のスピードが増し、参加者が広がり、市場規模そのものが膨らむという見方だ。

機関投資家の動きもすでに具体化している。2025年12月には、DTCCが、ブロックチェーン上で実物資産をトークン化できる内容について、米国証券取引委員会(SEC)からノーアクションレターを得た。DTCCは2024年に3.7京ドル規模の取引を処理しており、2026年上期には米国債のトークン化サービスを正式に立ち上げる計画を掲げている。

2026年1月19日には、ニューヨーク証券取引所(NYSE)が、米国株とETFの売買・決済を24時間体制でオンチェーン上で行えるプラットフォームを発表した。分割株への対応や即時決済、ステーブルコインを活用した資金調達支援などを盛り込む。NYSEはあわせて、BNY、Citi、ICEの清算機関全体でトークン化預金を支援する方針も示した。

ローゼンタル氏はこれについて、「世界で最も象徴的な証券取引所がオンチェーンへ向かっている」と期待感を示した。

Tradewebも2025年8月、通常の決済時間外にUSDCを担保として米国債をリアルタイムで資金調達する取引を、完全オンチェーン方式で初めて実行した。

同氏は、こうした変化を後押しする別の要因として、取引で生じる経済価値が仲介業者ではなく当事者側に残る構造を挙げる。既存市場は市場参加者よりも仲介者を中心に設計されており、機関取引ではプライムブローカーが資金調達コストを徴収してきたという。

これに対し、スマートコントラクトとアトミック決済は、その構造を崩し得る。ローゼンタル氏は「当事者同士がオンチェーン上で即時かつ確定的に取引できるようになった」と強調した。そのうえで、「既存の仲介者が確保してきたマージンが消えるわけではないが、それを誰が得るかは変わる。今後はインフラを構築する起業家がその役割を担う可能性がある」と述べた。

規制環境も追い風になりつつあるという。同氏は、「この流れが続けば、CLARITY法は、Genius法がステーブルコインの導入と拡大で果たした役割を、伝統金融でも果たし得る」と指摘したうえで、「大手機関が求めてきたガイドラインはすでに見え始めている」との見方を示した。

世界の金融インフラがオンチェーンへ移行すれば、それを支える新たな製品やサービスの需要も膨らむ。ローゼンタル氏は、DTCC、NYSE、Tradewebのような機関が急速にオンチェーン化を進めている一方、すべてを自前で構築するわけではないと指摘する。ミドルウェアやコンプライアンスツール、流通システムなどの周辺基盤は外部から調達する必要があり、この構図は1990年代に電子取引が広がった時期と変わらないとしている。

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