人工知能(AI)開発競争の軸がモデル性能からトークン価格へ移るなか、中国製AIモデルがコスト競争力を武器に利用を伸ばしている。OpenRouterのデータでは、DeepSeekやMiniMaxなど中国勢のトークン消費量が2026年2月以降、米国勢を上回った。
英Financial Times(FT)が26日(現地時間)に報じた。AIモデルの利用動向を追跡するOpenRouterによると、MiniMaxの「M2.5」モデルは3月20日時点で利用量が1カ月前比476%増となった。
トークンは、AIモデルが処理するテキストやコード、各種データの単位だ。開発者は使用したトークン量に応じて料金を支払うため、トークン価格はAI導入の広がりを左右する重要な指標になっている。
価格差は大きい。MiniMaxやMoonshotなど中国企業は、100万出力トークン当たり2~3ドル(約300~450円)で提供している。一方、Anthropicの「Claude Sonnet 4.5」は約15ドル(約2250円)で、価格は約6倍に開く。
FTによると、香港の開発者テリー・ジャン氏は「以前はClaudeしか使っていなかったが、いまは業務の80%でMoonshotのKimiモデルを使っている。1日の支出は50ドル(約7500円)に抑えられ、Claudeだけを使った場合の900ドル(約13万5000円)を大きく下回る」と話した。
AIエージェントの普及が進めば、この価格差の影響は一段と大きくなる可能性がある。単純なチャットボットがシェイクスピアの『ハムレット』を要約する際の消費量が3万トークン程度なのに対し、AIエージェントは簡単なコーディング作業でも最大2000万トークンを消費するという。
シドニーの技術コンサルティング会社Amplify AI Groupのウィル・リャンCEOは、「エージェントが1日に数百万トークンを消費すれば、トークン単価の差が小さく見えてもコストへの影響は大きい。エージェント導入が広がるほど、中国企業に有利な構図になる」と指摘した。
もっとも、中国勢がこの優位を維持できるかはなお不透明だ。Zhipu AIの「GLM-5」モデルは2月にOpenRouterの上位に入った後、急増した需要を処理しきれずサービス障害が発生。Zhipu AIは謝罪するとともに価格引き上げに踏み切った。これを受けて株価は1日で22%下落し、時価総額は100億ドル(約1兆5000億円)超減少した。