国内の証券会社が、モバイルトレーディングシステム(MTS)へのAI機能の搭載を加速している。相場要約や銘柄分析、動画配信などサービスの高度化が進む一方で、MTSのシステム障害も相次いでおり、安定運用や障害時の顧客対応体制が課題として浮上している。
証券業界によると、今年に入り各社は自社MTSに、AIによる相場要約、銘柄リポート、動画コンテンツ、リアルタイムの材料分析といった機能を相次いで導入している。
Kiwoom Securitiesは、AIを活用した業務相談チャットボットの利用者が最近30万人を超えたと発表した。生成AIを使い、複雑な問い合わせにも利用者ごとに最適化した回答を提供する。AIの回答で十分に対応できない場合は、専門相談員とのチャット相談に即時につなぐ仕組みを整えた。
Woori Investment Securitiesは、MTS「WooriWON MTS」にAI銘柄分析サービス「AIリポート」を導入した。国内外の主要約700銘柄を対象に、AIがデータを再構成して解釈・分析し、投資判断に役立つ情報を提供する。
Toss Securitiesは、AIを活用した「リアルタイム・イシュー」サービスを開始した。ニュースや開示資料などの大量の情報をAIが分析し、市場への影響が大きい主要イシュー20件をランキング形式で示す。Tossが独自開発した「オントロジー」技術により、特定のイシューが関連業界や企業に及ぼす影響を連関構造として分析するという。
Shinhan Investment Securitiesは、リサーチセンターが発行する週次の株式市況をもとに、AIで制作した動画コンテンツを毎週金曜日に定期配信している。
Daishin Securitiesは、海外企業の開示資料をMTS内でAIが翻訳・要約して提供するほか、企業業績や配当情報もAIで把握できるようにしている。米国の現地メディアが報じる海外企業や市場関連のニュースについても、AIが自動で翻訳・要約して配信する。
こうした動きを受け、証券各社のMTSを軸にしたAIサービス競争は本格化している。MTSが単なる売買チャネルを超え、総合金融プラットフォームへと進化していくとの見方も出ている。
一方で、MTSのシステム障害が相次いでいる点は大きな課題だ。今年に入り、Korea Investment & Securities、Kakao Pay Securities、Toss Securities、LS Securitiesなど複数社でMTSの不具合が続いた。
障害発生時には、コールセンターへの接続が事実上機能しにくくなる点も問題視されている。各社は緊急注文の手段としてARSやコールセンターの利用を案内しているが、アクセスが集中する局面では電話がつながりにくいという。
AI導入で業務の省人化が進むなか、障害時に利用者が頼れる実効性のある相談窓口が、かえって縮小する副作用も指摘されている。
それでも各社は、障害原因について「トラフィックの問題」と説明するにとどまり、具体的な改善策を十分に示せていない。問い合わせ対応のAI化が進んでいることもあり、相談人員の増強も容易ではないとの見方が大勢だ。
当局も状況を注視している。金融当局は最近、金融業界の関係者を集め、電算事故の再発防止を求めた。
金融監督院のイ・チャンジン院長は、「内部統制の不備によって電算事故が発生した場合は、金銭的ペナルティーを科す」と警告した。
証券業界関係者は、「限られた人員と資源で競争を勝ち抜くには、AI活用はもはや不可欠だ」としたうえで、「顧客向けサービスに加え、社内業務を担うAIの活用領域も今後さらに広がる」と話した。
Korea Exchangeによると、今年に入り今月初めまでの個人投資家による国内株式市場の累計取引額は2060兆ウォン。このうちMTS経由の約定比率は65.7%で、金額ベースでは1354兆ウォンに達した。
また、昨年末に9829万件だった株式取引活動口座数は、最近では1億276万件を突破した。