SK hynixが進める設備投資の総額が100兆ウォンを超える見通しとなった。こうした投資拡大を背景に、同社は中長期の財務目標として純現金100兆ウォンの確保を掲げ、米国でのADR上場を含む資金調達の具体化を急いでいる。HBM需要の拡大を追い風に、増産と先行投資を前倒しする動きが鮮明だ。
同社は米国での米国預託証券(ADR)上場に向けた手続きに入った。24日に米証券取引委員会(SEC)へForm F-1の登録申請書を非公開で提出。クァク・ノジョン社長は25日の株主総会で、2026年下期の上場を目指す方針を示した。調達資金はメモリー向け設備投資に充てる。
ADR上場を急ぐ背景には、投資需要の急拡大がある。SK hynixは最近、清州の前工程ファブ「M15X」(20兆ウォン)、後工程ファブ「P&T7」(19兆ウォン)、龍仁半導体クラスターの第1期ファブ(31兆ウォン)、ASMLとのEUV装置契約(約12兆ウォン)などを相次いで決定した。公表済みの案件だけでも総額は82兆ウォンに達する。
これに加え、市場で10兆〜15兆ウォン規模とみられるADRによる調達額や、龍仁ファブ関連で別途示された設備導入費、研究開発(R&D)投資まで含めると、投資総額は100兆ウォンを上回る見通しだ。同社はHBM市場が2030年まで年平均33%で成長すると見込んでおり、今後さらに投資負担が膨らむ可能性もある。
クァク社長が株主総会で、純現金100兆ウォン以上の確保を中長期の財務目標として示したのも、この流れに沿ったものだ。2025年末時点の純現金は12兆7000億ウォンとなり、2024年末の純借入金8兆5000億ウォンから1年で改善した。負債比率も同期間に64%から46%へ低下している。
もっとも、今後予定する投資規模を踏まえると、足元の現預金水準では十分ではないとの認識を示す。クァク社長は「過去と同様のダウンサイクルが到来しても、継続的に投資しながら成長を続けられなければならない」と述べたうえで、「十分な現金は将来の成長に向けた戦略資産であると同時に、市場の不確実性に備える保険でもある」と説明した。
生産能力の確保に向けたスケジュールも前倒ししている。龍仁の第1期ファブでは、初回クリーンルームの稼働時期を当初予定の2027年5月から同年2月へ前倒しした。M15Xも当初計画より早い2025年10月にクリーンルームを稼働させた。P&T7は2026年4月に着工し、2027年末の完成を目指す。
背景には、足元での需要拡大がある。2025年のHBM売上高は前年比で2倍超の成長を見込み、第4四半期のDRAM平均販売単価(ASP)は前四半期比で20%台半ば、NANDのASPは30%台前半の上昇となった。クァク社長は「AIインフラ投資やオンデバイスAIの拡大により、HBMに加え、AI DRAMやAI NANDの需要増にもつながる」と述べた。
新株発行を巡り株主の警戒感も
純現金100兆ウォン目標を巡っては、株主還元の縮小を懸念する声も出ている。これに対し、クァク社長は「順序の問題だ」と説明した。まず十分な現金を積み上げ、そのうえでより大きな配当や自社株消却が可能になるとの考えを示した。さらに「昨年の株主総会時点で株価は20万7000ウォンだったが、今年は100万ウォンを超えた」としたうえで、「最も重要だったのは適時の投資と技術開発だった」と強調した。
実際、同社は2025年に1株当たり1500ウォンの特別配当と、約12兆2400億ウォン規模の自社株消却を含め、総額14兆ウォン台の株主還元を実施している。
一方で、増資の方式を巡る株主の反発は不確定要因となる。韓国企業ガバナンスフォーラムは「余剰キャッシュフローが潤沢な状況で、既存株主の持ち分を希薄化させる新株発行には反対する」とし、自社株取得後に米国上場を行う案を代替策として示した。
現時点でADR発行の規模や方式は決まっておらず、クァク社長も株主総会でその点を改めて確認した。キム・ウヒョンCFOも先のカンファレンスコールで「2026年の設備投資(CAPEX)は前年より相当程度増える見込みだ」と述べている。調達手法を巡る議論が続くなかでも、投資ペースは落とせないというのが同社の一貫した立場だ。