米国とイスラエルによるイラン攻撃を受け、ビットコインと金の値動きが対照的となっている。ビットコインは急落後に7万ドル近辺まで持ち直した一方、金は11%下落し、安全資産としてどちらを評価すべきかを巡って市場の見方が割れている。
攻撃前まで、ビットコインは方向感に乏しい展開が続いていたのに対し、金は史上最高値を更新し、代表的な安全資産としての存在感を強めていた。だが、米国とイスラエルが2月28日(現地時間、以下同)にイランを攻撃して以降、両者の流れは逆転した。
金は原油高とインフレ懸念が広がる中で11%下落し、1983年以降で最大の週間下落率を記録した。一方、ビットコインは急落後に反発し、7万ドル近辺まで戻した。
こうした値動きを受け、市場ではビットコインが金に代わる安全資産になり得るとの期待も浮上している。ただ、専門家の見方はなお慎重だ。Cointelegraphは25日、戦時局面でビットコインと金の値動きが分かれた点に注目して報じた。
マルチカレンシー取引プラットフォームPrimeXBTのシニアアナリスト、ジョナタン・ランディン氏は、「ビットコインは安全資産というより、リスク資産としての値動きが目立つ」と指摘。「地政学的ショックが起きると、株式と一緒に売られる傾向がある」と述べた。
同氏は、足元のビットコインについて、レンジ相場を維持しながらも大きな流れでは下落トレンドにあると説明し、こうした動きは安全資産の典型とは言い難いとの見方を示した。
実際、ビットコインは戦争そのものより、グローバル流動性の変化や金融政策の動向に敏感に反応してきたとされる。暗号資産プロジェクトAlturaの共同創業者、マシュー・ピノク氏は、「ビットコインは流動性に左右されやすい高ベータ資産だ。金利上昇やドル高、上場投資信託(ETF)への資金流入の鈍化が重しになる」と語った。
近年のビットコインは、地政学的ショックに加え、ドナルド・トランプ米大統領のような影響力の大きい人物のソーシャルメディア(SNS)投稿にも敏感に反応してきた。ただ、そうした反応は総じて長続きしなかったという。
OrangeBTCの分析によると、2013年5月から2024年7月までの期間、ビットコイン価格はグローバル流動性との相関係数が0.94に達した。金の68.1%を大きく上回ったという。また、サム・キャラハン氏の分析では、ビットコインは12カ月ベースでみた期間の83%でグローバルM2と同じ方向に動いたとされる。
次いで連動性が高かったのは米大型株指数のS&P500で、ビットコインが依然としてリスク資産に近い性格を持つとの見方を裏付ける材料となっている。ランディン氏は、最近のデータも同じ傾向を示しているとして、2025年7〜9月期にグローバル流動性が拡大した局面で、ビットコインが史上最高値を更新した点を挙げた。
イラン攻撃後は、原油高とサプライチェーンの混乱を背景にインフレ圧力が強まった。米連邦準備制度理事会(Fed)は2026年の個人消費支出(PCE)インフレ見通しを2.7%に引き上げ、イラン情勢を受けて原油価格が1バレル110ドルを超える中、利下げに慎重な姿勢をにじませた。
これについてランディン氏は、「ビットコインは短期的なインフレヘッジというより、長期的な通貨価値の下落に備えるヘッジ手段として捉えるべきだ」と説明した。
同氏は、戦争に伴う原油急騰がインフレ期待を押し上げ、利下げ観測を後退させる一方で、実質金利を高止まりさせる要因になると分析した。こうした連鎖が金融環境を一段と引き締め、リスク資産への選好を弱め、ビットコイン需要を抑えるとみている。
ピノク氏も、地政学要因による原油高で生じるインフレが利回り上昇と中央銀行のタカ派姿勢を促す「悪いインフレ」の局面では、ビットコインが他のリスク資産とともに下落し得るとみる。
一方、オンチェーンデータには別の兆候もある。取引所の保有残高は減少し、大口ウォレットの保有は増加、継続的な蓄積も確認されているためだ。
ただし、マクロ環境が緩和しない限り、こうしたポジショニングがすぐに価格上昇につながるのは難しいとの見方も出ている。
イラン攻撃後の一部期間で、ビットコインが金を上回るリターンを示したのは事実だ。ただ、地政学リスクそのものより金融環境の変化に敏感に反応している点を踏まえると、「デジタル金」という評価にはなお検証の余地がある。
市場の関心は、ビットコインが流動性サイクルや株式市場の値動きからどこまで独立した動きを示せるかに集まっている。