米国で検討されている「Clarity Act」の改定案に、ステーブルコイン保有者への利息や報酬の付与を禁じる条項が盛り込まれ、暗号資産業界に波紋が広がっている。USDCの収益分配モデルを展開するCircleやCoinbaseには逆風となる一方、同様の還元を行ってこなかったTetherには相対的に追い風との見方が出ている。
ブロックチェーンメディアのCryptopolitanが25日(現地時間)に報じた。最近公表されたClarity Actの改定草案では、ステーブルコインを保有するだけで得られる利息や報酬、いわゆる「パッシブ収益」を禁止する内容が盛り込まれた。
影響が大きいとみられているのが、CircleとCoinbaseのUSDC事業だ。両社はこれまで、USDCの準備資産から生じる収益の一部を利用者側に還元する仕組みを運用してきたが、改定案ではこうしたモデルが規制対象に含まれる可能性がある。
市場は直ちに反応した。Circleの株価は1日で20%超下落し、IPO後で最大の下げ幅を記録。Coinbaseも9%超下落した。
Coinbaseは売上高の約20%をUSDC関連収益が占めるとされており、今回の制度変更の影響は避けにくいとの見方が強い。
一方、Tetherは今回の改定案で相対的に有利な立場となる可能性がある。これまでステーブルコイン保有者に収益を分配せず、発生した収益を自社に留保してきたためだ。
その結果、保有者への利息や報酬の付与を禁じる規制は、既存モデルを維持してきたTetherに有利に働く構図となっている。
改定案はパッシブ収益を禁じる一方で、決済や送金、プラットフォーム上の活動に連動する報酬については認める方向だ。ただ、具体的な基準や解釈は、米証券取引委員会(SEC)や米商品先物取引委員会(CFTC)、米財務省などの当局判断に委ねられる見通しだ。
法案成立までにはなお手続きが残る。上院での採決では60票が必要となるほか、下院での調整や大統領署名も経なければならない。現時点では、4月中旬以降に立法論議が本格化する見通しとされる。
もっとも、株式市場ではすでに関連銘柄に売りが広がっており、制度変更リスクを先取りする動きが出ている。
今回の改定を受け、資金が分散型金融(DeFi)へ向かう可能性も指摘されている。AaveやCompoundなどの主要プロトコルは、なお年5~20%水準のステーブルコイン収益を提供しているが、この領域は今回の規制の直接対象には含まれていない。
これらのサービスは中央集権型企業とは異なり、スマートコントラクトを基盤に運営されている。このため、現行の法体系では直接的な規制が難しく、米議会も今回のClarity ActでDeFiに関する明確な規定を盛り込めていないという。
こうした状況が続けば、中央集権型ステーブルコインから流出した資金がDeFiに移り、新たな収益機会として定着する可能性があるとの分析も出ている。
業界では、今回の措置は単なる規制強化にとどまらず、ステーブルコイン市場の構造そのものを変える可能性があるとみられている。法定通貨と暗号資産をつなぐ基盤であるステーブルコインの設計が変われば、デジタル資産市場全体にも連鎖的な影響が及ぶとの見方だ。
Clarity Actは「規制の明確化」を掲げるが、その行方次第ではステーブルコイン市場の勢力図を左右する転機となりそうだ。