Andreessen Horowitz(a16z)のゼネラルパートナー、デービッド・ジョージ氏は、ソフトウェア企業がAI時代を生き残るには、「成長率を引き上げる」か「高収益体質へ転換する」かのいずれかが不可欠だと指摘した。従来のような中間地帯はもはや通用しないとの見方を示している。
同氏は最近、a16zの公式サイトに掲載した投稿で、市場から持続可能と評価される条件として2つの基準を提示した。1つは、12〜18カ月以内にAIベースの新製品によって売上成長率を10ポイント以上押し上げること。もう1つは、株式報酬費用(SBC)を含む実質営業利益率を40%超まで高めることだ。
AIの普及を受け、既存ソフトウェア企業を巡る見方は変わりつつある。AIが既存プレーヤーの将来を脅かすとの見方もある一方、足元で競争環境がAI登場前より厳しくなっているのは確かだ。ジョージ氏は、こうした環境下では「成長」か「高収益」かを明確に選ばなければならないと訴える。
同氏は、来年までに中間地帯にとどまる企業は、成長圧力、希薄化(Dilution)、バリュエーション倍率の低下(Multiple Compression)という三重の圧力に直面すると警告した。「両方やる」「まだ検討中」といった姿勢では、市場の評価に耐えられないとみている。
最初の基準である「売上成長率10ポイント改善」は、売上が毎年10%増えるという意味ではない。成長率そのものを10ポイント引き上げるという意味で、たとえば前年の成長率が20%なら、当年は30%が求められるという説明だ。
この水準の成長を実現するには、既存製品にチャットボット機能を追加するだけでは不十分だと同氏は指摘する。成長率を実際に押し上げる新製品の投入が必要になるという。
収益モデルの見直しにも踏み込んだ。既存のユーザー課金はすぐにはなくならないものの、顧客がAIでコスト削減を進める際、最初に見直すのは人員、すなわちシート数になるとした。そのうえで、今後の成長はトークン消費量や自動化、成果ベースの課金モデルから生まれるとの見方を示した。
一方、売上成長率を高く維持するのが難しい企業に残された選択肢は、高収益化だという。同氏は、SBC込みの実質営業利益率として40〜50%を目標水準に挙げた。
その実現には、10〜20%の人員削減といった小幅なコスト削減だけでは足りないとみる。組織階層の削減、サービスの標準化、委員会の廃止、契約規模が小さく採算の低いロングテール顧客に対する最低価格の引き上げ、あるいは離反の容認が必要だとした。加えて、発行する株式1株ごとを実際のコストとして捉える姿勢が前提になると述べた。
具体例として挙げたのが、VMwareを買収したBroadcomだ。同氏は、Broadcomが買収後に製品群を大胆に絞り込み、サブスクリプションモデルへ移行した結果、2024会計年度ベースの調整後EBITDAマージンを売上高の61%水準まで高めたと説明した。「厳しい手法ではあるが、急進的な構造改革が実際に可能であることを示した」と評価している。
また、エンジニア1人当たりのトークン支出予算を増やす必要性にも言及した。月1000ドル程度では十分とは言えないとし、すでに一部企業では、優秀なエンジニア1人が同時に20〜30のAIエージェントを管理し、生産性を数十倍に高めていると紹介した。こうした環境では、10人規模の委員会型組織は4人の小規模チームに後れを取るとみている。
既存の競争優位がAI時代にも通用するかを、冷静に見極める必要があるとの指摘もした。同氏は、データだけではもはや競争優位にならず、連携機能も容易に複製されると分析する。さらに、AIエージェントが複数のシステムを横断して動くようになれば、コア機能同士の競争は一段と激しくなるという。複数のソフトウェアをまたいで業務を処理する場面が増えるほど、特定ベンダーの中核機能が競合のAIエージェントに置き換えられる可能性も高まるとみている。