国会立法調査処は25日、オリンピックの中継権独占を巡る論争を踏まえ、普遍的視聴権制度の見直しを求める報告書を公表した。国民的関心行事について、視聴者が追加費用を負担せずに見られることを放送法に明記すべきだと提言したほか、公共放送の役割強化やオンライン配信を含めた制度再設計の必要性も示した。
報告書のタイトルは「オリンピック中継放送権独占論争とデジタルメディア時代の普遍的視聴権制度」。現行の放送法に基づく普遍的視聴権の定義について、「追加費用なし」の要件を明文化すべきだと指摘した。有料放送やOTTに加入していない視聴者でも、国民的関心行事を視聴できるようにするのが狙いだ。
あわせて、中継を担う事業者が現れない場合には、公共放送に中継義務を課す案も検討すべきだとした。
国民的関心行事の対象範囲の見直しも課題に挙げた。現行の告示は、多くの国民の関心を集める人気スポーツを中心に対象を限定しているとし、パラリンピックや女子代表チームの試合など、社会的少数者が当事者となる行事や、その他の文化行事まで含める必要があるとの見方を示した。
さらに報告書は、放送チャンネル中心の現行制度を、オンラインプラットフォームや各種サービスを含む形に再設計すべきだと提起した。放送の中継権とデジタル配信権を分けて整理したうえで、行事の種類や到達範囲、無料提供の可否、優先的な中継権のあり方などを基準に制度改編を検討する必要があるとしている。
背景には、2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックを有料放送のJTBCが独占中継したことがある。地上波でオリンピック中継が行われなかったのは今回が初めてで、有料放送に加入していない視聴者は競技を視聴できなかった。
JTBCは2032年までの夏季・冬季オリンピックとFIFAワールドカップの中継権を独占的に確保している。再販売交渉がまとまらなければ、6月の北中米ワールドカップでも同様の事態が生じる可能性があると報告書はみている。
一方で、JTBCは全世帯の90%超をカバーする放送事業者で、現行の放送法には抵触しない。現行法は国民的関心行事について、一定比率以上の世帯が視聴できる放送手段の確保を求めているが、「追加費用なし」で視聴できることまでは規定していない。
報告書はこのほか、国民的関心行事を指定する告示(放送通信委員会告示第2016-14号)が2016年の制定以降、一度も改定されていない点も問題視した。
国会立法調査処は、メディア環境や国民的関心事は今後も変化し得るとして、普遍的視聴権の概念や運用方法を柔軟に見直しながら、関連制度の改善を進める必要があると指摘している。