Samsung SDIとL&Fは3月24日、LFP(リン酸鉄リチウム)電池向け正極材の中長期供給契約を締結したと発表した。契約額は1兆6000億ウォン(約1760億円)。2027年から2029年までの3年間は確定数量を供給し、その後3年間の追加供給オプションも盛り込んだ。北米のESS市場を見据え、中国依存を抑えた材料調達網の構築を進める狙いがある。
Samsung SDIは、今回確保したLFP正極材を、米インディアナ州の合弁会社StarPlus Energy(SPE)によるESS向け電池生産に充てる。SPEはStellantisとの合弁会社で、2025年第4四半期から一部ラインを電気自動車向けからESS向けへ段階的に切り替えている。2026年第4四半期からは、従来のハイニッケルNCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)電池に加え、LFP電池の量産も始める計画だ。
Samsung SDIは、中国以外の材料調達網を整備するとともに、北米ESS市場での事業拡大を図る構えだ。同社は最近、米大手エネルギー開発・運営会社と2兆ウォン台のESS向けLFP電池供給契約を結んだ。3月16日にも、米エネルギー専門企業と1兆5000億ウォン(約1650億円)規模の契約を追加で締結している。
Samsung SDIの関係者は「素材市場で脱中国需要が高まる中、国内企業と先行して供給契約を結んだ」と説明した。その上で「今回の契約を通じて北米市場での競争力を一段と高め、より多くの事業機会につなげたい」と述べた。
LFP正極材は、世界供給の大半を中国企業が握る。米政府がPFE規定などを通じて原産地規制を強化する中、中国以外の供給網確保は電池業界の重要課題となっている。今回の契約は、中国以外の企業同士による初の大規模LFP正極材供給契約であり、供給網再編の流れの中で戦略的意義は大きい。
L&Fは2025年8月、中国以外の企業として初めてLFP正極材への新規投資に着手した。現在、年産6万トン規模の生産設備を2段階で整備している。第1段階の年産3万トン設備は4月に完成する予定で、試運転と顧客テストを経て、早ければ2026年第3四半期に量産へ入る見通しだ。今回の契約数量に対応するため、第2段階の年産3万トン投資も前倒しで進め、脱中国LFP材料市場で早期に先行優位を確保する方針としている。
L&Fは、ハイニッケル正極材分野での技術競争力を基盤に、ウルトラハイニッケル正極材の量産を継続する。これと並行して、ESSおよび中低価格帯の電気自動車向けLFP事業を新たな成長の柱に据える二本柱戦略を進める。ハイニッケルとLFPをそろえた製品構成で市場変動に対応し、北米で進む供給網再編の流れに合わせて事業ポートフォリオを広げる考えだ。
リュ・スンホンCFOは「当社は現在、中国以外の地域でLFP素材を生産できる最初の企業だ」と述べた。さらに「韓国の電池メーカーに加え、海外の完成車メーカーやグローバルESS企業にも供給の可能性を積極的に打診しており、成長の持続が見込める」と説明した。「顧客ごとの数量配分や追加ラインの増設など、戦略的な成長策も計画している」としている。