個人情報流出を受けて落ち込んでいたCoupangの週次アクティブ利用者数(WAU)が、3月に入って持ち直している。ワウメンバーシップの優位性を高める施策が利用回復を下支えしているとの見方があるほか、ハロルド・ロジャース暫定代表による早朝配送の現場体験も、業績や対外関係の改善につながる動きとして注目されている。
業界によると、Coupangの週次利用者数は2800万人を上回った。IGAWorksの「Mobile Index」(Android・iOSベース)では、3月9~15日の利用者数は2828万1963人だった。大規模な個人情報流出の直後に記録した2908万952人に近づいており、利用指標は回復基調に入ったとみられる。
個人情報流出の影響は、2025年10~12月期の業績と利用指標に表れていた。同四半期は流出公表の時期を含み、営業利益は前年同期比97%減となった。利用者の退会や買い控えの動きが数字に表れたとの分析も出ていた。
米証券取引委員会(SEC)に提出したCoupang Inc.の報告書によると、2025年10~12月期の連結営業利益は115億ウォン(800万ドル、約12億円)で、前年同期比97%減だった。同四半期に1回以上Coupangを利用したアクティブ顧客数は2460万人と、前四半期の2470万人から10万人減少した。Coupangは、個人情報流出が売上高成長率やアクティブ顧客数、ワウメンバーシップなどの主要指標にマイナスの影響を与えたと分析している。
もっとも、3月中旬時点では個人情報流出直後の週次利用者数との差は79万8989人まで縮小した。利用減に歯止めがかかり、回復の兆しが鮮明になっている。
背景には、会員基盤の引き留め効果があるとみられている。有料の「ワウメンバーシップ」の解約を抑え、再利用を促す施策が一定の効果を上げたとの見方だ。ワウメンバーシップでは、ロケット配送の無料配送に加え、動画配信サービスのCoupang PlayやフードデリバリーのCoupang Eatsの無料配送など、自社サービス内で各種特典を提供している。
Coupangは1月15日、登録顧客を対象に1人当たり最大5万ウォン分のクーポンを配布した。対象サービスはCoupang、Coupang Eats、R.LUX、Coupang Travel。業界によると、日次アクティブ利用者数(DAU)は配布当日の15日に1500万人台後半だったが、翌16日には1638万人へ増加した。長期的な効果よりも、短期的に利用者流出を食い止める施策として機能したとの受け止めが多い。生活密着型プラットフォームとしての特性を踏まえ、メンバーシップ離脱を検討する顧客の再購入を狙ったとの分析もある。
同社は今後、ワウメンバーシップの優位性をさらに高める方針だ。4月中旬から、未加入者向け無料配送の適用基準を「最終支払額ベース」に変更する。未加入者は、割引適用後の支払額が1万9800ウォンを超えなければ無料配送を受けられなくなる。
Coupangはこの措置について、一部販売者が無料配送の条件に合わせて価格を引き上げる抜け道を防ぐためだと説明している。一方、業界では、会員と非会員の特典差が一段と明確になり、中長期的な会員転換を促す布石になるとの見方も出ている。
利用指標の持ち直しを受け、業績面でも改善期待が出ている。Coupangは先月の決算説明会で、2026年1~3月期の売上高が5~10%成長するとの見通しを示した。Coupang Inc.の最高財務責任者(CFO)、ガウラブ・アナンド氏は、1月に4%台まで鈍化したプロダクトコマース事業(韓国のロケット配送、ロケットフレッシュなど)の成長率について、2月から改善の兆候を確認したと説明。為替影響を除いたベースで、全社売上高は5~10%成長するとの見方を示した。
こうしたなか、3月19日に行われたロジャース暫定代表の早朝配送体験は、対外関係の変化を示す動きとして受け止められている。ロジャース氏はヨム・テヨン議員とともに、19日夜から20日未明にかけて約10時間、京畿道城南市中院区一帯で配送員の業務プロセス全体を体験した。
この体験は、2025年12月の国会聴聞会でヨム議員がロジャース氏に深夜配送業務を共に体験するよう提案したことを受けて実現した。顧客情報流出後は、聴聞会を含めCoupangに対する厳しい視線が続いていただけに、今回の対応は政府・政界との関係改善を意識した動きとの見方が出ている。
ロジャース氏は体験後、「Coupang事業所のすべての労働者を誇りに思う。今後も安全で先進的な労働環境の整備に最善を尽くす」と述べた。こうした動きが消費者の信頼回復のきっかけになるかどうかも注目点だ。
業界関係者は「顧客情報流出後は利用者離れへの懸念が大きかったが、足元のWAUの動きはワウメンバーシップの引き留め効果が依然として機能していることを示している」と指摘。その上で「今後の焦点は、利用指標の回復が実際の売上高と収益性の改善につながるかどうかだ」と話した。