NVIDIAがGTC 2026で次世代グラフィックス技術「DLSS 5」を公開した。光表現の強化による描画品質の向上に期待が集まる一方で、ゲーム本来の雰囲気が損なわれるとの批判も浮上している。初期デモでRTX 5090を2基使用したことから、動作要件の高さを懸念する声も出ている。TechRadarが3月21日(現地時間)に報じた。
DLSS 5は、リアルタイムのニューラルレンダリングによってライティング表現を大幅に強化する技術だ。NVIDIAは、ゲームグラフィックスの写実性を高める技術だとアピールしているが、公開直後からオンラインコミュニティでは評価が割れた。
Bluesky、Reddit、Xでは、DLSS 5を適用した映像や比較画像に対し、「従来の画作りの方が自然だ」「AIで加工しすぎたように見える」といった反応が相次いだ。特に、明るすぎるライティングや強すぎる色味によって、作品の空気感まで変わってしまうとの指摘が目立つ。
キャラクターの顔つきが不自然に見える、画面全体が過度に明るくシャープになり、彩度も上がりすぎている――といった批判も出ている。一部ユーザーは「AI slop」とまで表現した。
これに対しNVIDIAは、生成AIのようにゲーム内の要素を新たに作り出すものではなく、既存のグラフィックスに対してライティング効果を精緻に重ねる技術だと説明している。それでも、単なる補正の範囲を超え、キャラクターやシーンの印象そのものが変わって見えると受け止めるユーザーは少なくない。
具体例として挙がったのが「Resident Evil Requiem」だ。ユーザーの間では、作品本来の陰鬱で荒々しいホラー表現が、DLSS 5の適用によって薄れたとの見方が出ている。ライティングの変化がキャラクターと背景の印象を同時に変え、意図された恐怖演出や作品のアートディレクションを損なうのではないか、という問題提起だ。
もう一つの論点は、ハードウェア要件の高さだ。初期デモではRTX 5090を2基使用しており、「一般向けGPUでは快適に動かないのではないか」との懸念が浮上した。事実上、新型GPUの買い替えを促すための技術ではないかとの見方も出ている。
もっとも、こうした見方に対する反論もある。NVIDIAは、最終的な商用版のDLSS 5は単一GPUで動作すると説明している。現在公開されているデモは、あくまで初期プレビュー段階の技術検証という位置付けで、4K未満の解像度では負荷が下がる可能性もある。
ただ、RTX 5080以下のGPUでどの程度の性能が出るのか、あるいは実質的に次世代のRTX 6000シリーズを見据えた技術になるのかは、なお不透明だ。
NVIDIAのDLSSを巡っては、過去にも同様の論争があった。DLSS 1は公開当初、ぼやけた表示や各種グリッチで厳しい批判を受けたが、DLSS 2で時系列ベースのアップスケーリングを導入して画質を改善し、市場の評価は大きく持ち直した。DLSS 3でも当初は「偽フレーム」との批判が出たものの、DLSS 3.5を経てフレーム生成の安定性が向上し、現在はおおむね受け入れられている。
このため市場では、DLSS 5も初期段階では反発を招いているものの、今後のアップデートや後続バージョンで完成度が高まる可能性があるとの見方が出ている。正式版や次世代GPUとの組み合わせによって、現時点で指摘されている課題の多くが解消される可能性もある。
DLSS 5の成否は、単純な描画性能だけでなく、ゲームごとの雰囲気やアートディレクションをどこまで尊重しながら仕上げられるかにかかっている。強い反発はあるものの、DLSS 1やDLSS 3と同様に、時間の経過とともに評価が変わる可能性もありそうだ。