AlibabaのQwenチームで最新モデル公開から24時間以内に技術責任者とシニア研究員2人が離脱したと伝わり、AI業界ではオープンウェイトモデルの収益性を巡る懐疑論が強まっている。GoogleやOpenAIが閉鎖型モデルへ軸足を移しつつあることも重なり、「オープンウェイトAIは採算が取りにくい」との見方が広がっているためだ。
こうしたなか、AIモデルを手掛けるLightricksの共同創業者兼CEO、ジーブ・ファーブマン氏は、オープンウェイト戦略を引き続き推進する姿勢を鮮明にした。
同氏は最近、X(旧Twitter)への投稿で、オープンウェイトモデルを基盤とするローカルAIの戦略的価値を繰り返し訴えている。
ファーブマン氏は、GoogleやOpenAIが閉鎖型モデルに注力する理由について、「オープンウェイトが収益にならないからではない」と主張する。狙いは、あらゆるピクセルやワークフローに“通行料”を課せるような、ソフトウェアの独占的な構造を築くことにあるという。
プロ向け制作スタジオにとって、閉鎖型APIの制約は小さくない。ファーブマン氏は「映画『アバター』の視覚効果を手掛けたWeta Digitalは、既製ソフトを購入して使うのではなく、独自のレンダリングパイプラインをゼロから構築した」と説明。そのうえで、「照明の物理計算を既存ツールに深く組み込むにはモデル内部にアクセスできる必要があるが、ブラックボックス型のAPIではそれができない」と指摘した。
さらに、公開前のコンセプトアートを外部サーバーにアップロードすること自体が、セキュリティ上の問題になり得るとも述べた。プロの制作会社にとっては、オンプレミスで利用できることが選択肢ではなく前提条件になる、との見方だ。
同氏はまた、「他社の閉鎖型APIの上に製品を載せるだけでは、中核機能を他社に依存しているにすぎない」とも指摘する。供給側が価格を引き上げれば利益率は圧迫され、モデル更新の影響で製品全体が不安定になる恐れがあるためだ。
こうした構図について同氏は、1990年代に閉鎖型OSが技術スタック全体を囲い込もうとした結果、Red HatがLinuxを基盤に数十億ドル規模の企業へ成長する余地が生まれたのと同じだと説明した。
Lightricks自身も、Red Hatに近い道筋を描いているという。基盤技術を公開して業界標準化を狙い、企業向け提供や外部プラットフォーム向けライセンス供与で収益を得るモデルだ。開発者がLightricksの技術を使って独自ツールを開発するほど、同社の事業基盤は厚くなるとしている。
この戦略の一環として、Lightricksは最近、LTX-2.3を重みまで公開するオープンウェイトとして公開した。
ファーブマン氏によると、LTX-2.3は209億パラメーターのマルチモーダルモデルで、テキスト、画像、音声、動画を扱える。データを高度に圧縮して処理する構造を採用しており、民生向けハードウェア上でも完全にローカル動作し、4K解像度の動画生成にも対応するという。
同氏は「ローカルで動かせばクラウドに依存する必要がなく、利用量が増えてもコストが比例して膨らみにくい。生成したアセットもローカルドライブの外に出ない」と強調した。
クリエイティブソフト市場ではこれまで、重く複雑なインターフェースが参入障壁になってきた。ただ、AIコーディングツールの登場によって、小規模なチームでもこうしたインターフェースを数週間で再構築できるようになったという。
ファーブマン氏は「インターフェースはもはや差別化要因ではない。競争優位の源泉は基盤モデルそのものに移った」とも述べた。高性能なマルチモーダルモデルを1つ学習させるには、数千万ドルと数年単位の研究開発が必要になるとしている。
そのうえで同氏は、「LightricksはHugging Faceに重みを公開し、誰でも独自のパイプラインを構築できるようにした。エンジンはLightricksが作るが、パイプラインはユーザーのものだ」と語った。