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AIエージェントの活用が広がる一方で、誤作動や判断ミスに伴うリスクへの警戒感も強まっている。メール整理やファイル編集、日程調整といった業務を自律的にこなす一方、削除ミスやファイル破損、高額なスポンサー契約の受諾といった問題も報告されており、実務を全面的に委ねるにはなお早いとの見方が出ている。

人の手を介さずに特定の作業を自動処理するAIエージェントを巡っては、SNSや開発者コミュニティで導入事例や利用体験の共有が相次ぎ、関心が高まっている。

AIエージェントが近くホワイトカラー業務を置き換えるとの見方を示すAI専門家も増えている。企業側が人員削減の口実として活用するケースも出ており、AIの台頭を理由に従業員の40%削減を表明したフィンテック企業Blockはその代表例とされる。

1月には、オープンソースのAIエージェントツール「OpenClaw」と、それを活用したAIエージェントSNS「Maltbook」の登場で、テック業界の関心が一段と高まった。最近ではOpenClawの開発者がOpenAIに加わり、MetaがMaltbookを買収した。AIエージェントを軸に業界再編が進みつつあることを印象づける動きといえる。

OpenAIやMetaに加え、Google、Anthropic、Perplexity、Shortwaveなどシリコンバレーの複数企業も、法人向けAIエージェントの開発を進めている。

一方で、熱気が高まるほど誤作動リスクへの懸念も強まっている。チャットボットと同様、AIエージェントも誤りを避けられない。メール送信やファイル編集を自動で進める過程で問題が起きれば、利用者が事後対応に追われる可能性がある。

Meta AI Labの研究者サマー・ユエ氏は最近、メール整理を任せたところ、AIエージェントが受信メールを削除し始めた体験を共有し、注目を集めた。

OpenClawのようなAIエージェントは、一般利用者にとって導入や運用のハードルも高い。米New York Timesによると、マーケティング会社を経営するビル・カットラー氏はOpenClawの利用に数週間を費やした。同氏は「設定も実運用も難度が高い」としたうえで、「こうした技術は有用性より誇張が先行している」と語った。

Anthropicが提供する「Claude Cowork」は、OpenClawよりも金融、ヘルスケア、法律分野のリサーチ業務で比較的信頼性が高いとの評価を受けている。ただ、不確実性が残る点では例外ではない。

AI性能テスト企業Vals AIによると、あるテストではClaude Coworkにファイル編集を依頼した結果、対象ファイルを復旧不能な状態にした事例も確認された。

New York Timesが報じた複数の事例からは、AIエージェントは特定領域では有用であっても、業務を全面的に委ねられる段階には至っていない実情がうかがえる。

整形外科の外傷専門医で、ヘルスケアテックのスタートアップを運営するクリスティアン・フェアン氏は、Claude Codeを使って研究報告書やスプレッドシートを作成し、メールの要約や返信文の下書きも任せている。同氏によると、生活の多くを自動化するのにClaude Codeを活用しており、「秘書室長に近い」存在だという。

ただし、ボットが実行する作業はすべて細かく確認している。「事前に承認しない限り、メールは送らせない」としており、最終判断は人が担う姿勢を崩していない。

同氏は、AIエージェントはもっともらしい応答を返し、印象的な結果を示すことも多いとしつつ、内容を検証できる専門性がなければ、事実に反する情報やハルシネーションを見逃しやすいと指摘した。

New York Timesは、1月の世界経済フォーラムでの発表に向け、AIエージェントに日程調整を任せたスタートアップ創業者セバスティアン・ヘイネマン氏の事例も紹介した。同氏が眠っている間、AIエージェントはインターネット上で世界経済フォーラム関係者を探し、発言機会を得るための交渉まで進めた。報道によると、最終的にはスイスの事業家との長いやり取りの末、話をまとめたという。

ただ、ヘイネマン氏が目を覚ますと、事態は想定とは異なる方向に進んでいた。AIエージェントが約3万1000ドルの企業スポンサー料の支払いを即答で受け入れていたためだ。同氏は世界経済フォーラムの主催者側に支払えないと伝えたが、「それならイベントには参加できない」と告げられたという。結局、参加だけのために約4600ドルを支払うことになったと、New York Timesは報じている。

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