携帯電話の開通時に顔認証を義務付ける制度の全面施行が延期される。科学技術情報通信部は3月20日、顔認証による本人確認手続きの試験運用を6月30日まで延長すると発表した。人権上の指摘や個人情報漏えいへの懸念、現場で確認された誤認識の事例などを踏まえた措置で、代替手段の導入も検討する。
この手続きは、政府が合同で公表した「ボイスフィッシング根絶総合対策」の一環として導入された。ボイスフィッシング犯罪に悪用される携帯電話の不正開通を防ぐ狙いがあり、昨年12月23日から移動通信3社の対面チャネルと格安通信事業者の非対面チャネルで試験導入していた。
当初は3月23日に全面施行する予定だった。しかし、3月13日に国家人権委員会が改善勧告を出したことで、制度の再検討を迫られた。国家人権委員会は、国民の基本権の行使に影響を及ぼしかねない点や、関連法令の整備が不十分な点を問題視した。
これに加え、市民社会団体は個人情報漏えいの懸念を継続的に提起してきた。試験運用の過程では、外部環境の影響による誤認識も確認されたため、同部は全面施行の延期を決めた。
科学技術情報通信部は、試験運用延長の理由について「利用者の不便を最小限に抑え、制度の定着を図るため、移動通信3社、格安通信協会、移動通信流通協会など業界の意見を総合的に検討した結果だ」と説明した。
業界側は、現場の混乱を避けるため業務プロセスの明確化を求めていた。照明や通信状態などの外部要因に対応できるよう、現場対応マニュアルの補完も要請した。
また、高齢者や障害者、デジタル弱者層に加え、顔認証に抵抗感のある利用者の選択権を保障できる代替手段の整備と、現場での十分な案内も必要だと指摘した。
政策効果を高めるには、移動通信3社と格安通信事業者の全チャネルへの手続き導入に加え、新端末の発売時期や5月の「家庭の月」など、移動通信の繁忙期も考慮する必要があるとして、3カ月以上の試験期間延長を求めていた。
科学技術情報通信部は現在、行政安全部のモバイル身分証アプリ内の暗証番号認証をはじめ、ビデオ通話による認証、指紋・虹彩などの生体認証、口座認証など複数の代替手段を検討している。試験運用期間中に業界の意見を追加で取りまとめ、代替手段が固まり次第、別途発表する方針だ。
チェ・ウヒョク科学技術情報通信部情報保護ネットワーク政策室長は「顔認証技術を活用した本人確認手続きは、携帯電話の名義盗用や名義貸しの防止に最も実効性の高い手段だ」と述べた。その上で「現場の不便を最小限に抑え、国民が体感できる安全で信頼される通信環境の構築に向け、事業者や関係機関、専門家と連携しながら必要な改善を継続していく」と語った。