AIによる「無料化」論の前提となるのは、電力とインフラの確保だ。写真=Reve AI

人工知能(AI)の進展が「あらゆるものを無料にする豊かな時代」をもたらす――。こうした期待に対し、実際の焦点は生産コストの低下そのものではなく、それを支えるインフラとエネルギーを誰が握るかにあるとの指摘が出ている。

Cointelegraphが19日(現地時間)付で報じたところによると、メラブ・オザイア博士は、AIが貧困を終わらせ、広く豊かさをもたらすとする楽観論について「現実とかけ離れている」との見方を示した。イーロン・マスク氏、ピーター・ディアマンディス氏、デミス・ハサビス氏らはAIが「急進的な豊かさ」を生む可能性に言及しているが、実際の経済構造はそれほど単純ではないと分析した。

AI、ロボット、3Dプリンティング、自動化物流が組み合わされれば、生産コストが大幅に下がる可能性はある。理論上は、デジタルコンテンツにとどまらず、物理的な製品でも限界費用がゼロ近傍まで低下しうる。

ただ、その前提となるのは、エネルギーコストが極めて低いことだ。現状のように電力コストが高い環境では、あらゆる財やサービスを無料化するのは難しいとみられている。

現在のAIインフラは、膨大な電力を消費するデータセンター、いわゆる「AIファクトリー」に大きく依存している。こうした基盤はNVIDIA、Amazon Web Services(AWS)、SpaceXなど一部の企業が主導しており、生産性や収益性が高まるほど資産がさらに集中する可能性が高いという。

エネルギーコストを引き下げる選択肢としては核融合が挙げられるが、商用化にはなお数十年を要する見通しだ。一方、核分裂は既に実用化されているものの、廃棄物処理や安全性の課題を抱える。

より現実的な対応策としては、太陽光や風力など再生可能エネルギーを基盤とするインフラの拡充がある。中国でも大規模な再生可能エネルギー投資を背景に、AIと電力を結び付けたエコシステムづくりが進んでいるとされる。

一部では、月面太陽光発電や宇宙インフラの構築といった長期シナリオも取り沙汰されている。ただ、巨額の初期投資と技術面のハードルを踏まえると、短期的な実現は難しいとの見方が大勢だ。

オザイア博士は、AI時代でも「完全な無料」は容易には実現しないと結論付けた。AIが生産コストを押し下げる可能性はあっても、無料で提供できる範囲や条件は、それを支えるインフラとエネルギーの所有者によって左右されるためだ。

専門家の間では、無料サービスそのものは成り立ち得るものの、その見返りとしてデータ統制や利用者の選択肢の制限が伴う可能性もあるとの指摘が出ている。AIが生む豊かさを決めるのは、技術だけではなく、権力と資本の構造だという見方だ。

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