暗号資産市場で、AIを活用したトレーディングボットへの関心が急速に高まっている。Anthropicの「Claude」を使った自動売買ボットが数百万ドル規模の利益を上げたとの話も広がるが、専門家の間では、個人投資家が同手法で継続的に収益を上げるのは難しいとの見方が出ている。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが17日(現地時間)に報じたところによると、暗号資産投資ファンドDragonfly Capitalのパートナー、ハシーブ・クレシ氏は、AIトレーディングを巡る熱狂には誇張が含まれていると指摘した。
同氏は、AIトレーディングが本格的に成立するには、3つの条件が必要だと説明する。主要AI企業が暗号資産取引向けの専用モデルを開発すること、個人投資家が機関投資家と競争できること、そしてAIがオープンな市場で継続的に収益を生み出せることだ。ただ、これらはいずれも現実には満たしにくい条件だという。
まず、主要AI企業が暗号資産取引向けモデルの開発に積極的でない理由として、クレシ氏は責任問題を挙げる。AIの誤判断によって大きな損失が発生したり、資産の誤送金が起きたりした場合、単なる技術上の問題にとどまらず、法的責任に発展しかねないためだ。このため、大手AI企業はこの分野に慎重な姿勢を取っているとした。
個人がAIを使って売買戦略を構築したとしても、次に立ちはだかるのが市場構造だ。汎用モデルを基盤とする戦略は広く模倣可能で、同じ手法により高速なインフラと潤沢な資本を持つ機関投資家が参入しやすい。クレシ氏は「基本モデルで利益が出るのであれば、大手クオンツ・ファンドはすでにそれを数千規模で展開しているはずだ」と述べ、個人の優位性は限られるとの見方を示した。
自律型AIエージェントが自ら継続的な収益を生み出すとの期待についても、同氏は懐疑的だ。同一モデルを基盤にしたAIは、似通った戦略やアイデアに収れんしやすく、差別化された競争力を築きにくい。人間の経験や文脈に根ざした独創性を補いにくい点も課題として挙げた。
こうした事情から、AIトレーディングは一部の成功例こそあっても、持続的な収益モデルとして広く定着するのは容易ではないとの見方が強い。暗号資産市場ではすでに、機関投資家主導の超高速アルゴリズム取引と大規模資本が優位を占めており、個人が同じ土俵で競争するのは極めて難しいためだ。
AIベースのトレーディングブームは注目を集めているものの、市場の実態を見る限り、長期的に優位を確保できるのは依然として機関投資家側だというのがクレシ氏の見立てだ。AIを導入しても、「最終的にはハウスが勝つ」という市場の原則は大きく変わらないとしている。