企業向けAIエージェント市場で、OpenAIやAnthropic、AWS、Microsoftなどの競争が激しさを増している。こうした中、独自の大規模言語モデル(LLM)を持たないPalantirが、既存システムとのデータ連携や導入支援を強みに存在感を高めている。
OpenAIやAnthropicは、プライベートエクイティ各社とジョイントベンチャーを設立し、投資先企業へのAI導入を進める動きも見せている。
OpenAIは今年初め、企業向けAIエージェントプラットフォーム「Frontier」を公開した。企業が複数のAIワーカーを構築し、各種エンタープライズアプリケーションのデータを取り込めるようにする戦略だ。
Anthropicも「Claude Code」や「Claude Work」を通じ、開発者・非開発者を問わず、企業ユーザーがAIエージェントを実務で活用できる環境づくりを進めている。
AWSやMicrosoftなどのクラウド大手も同様に、企業がAIエージェントを安全に運用できる基盤整備への投資を拡大している。SnowflakeやDatabricksといったデータプラットフォーム企業も、足元でAIエージェント関連の取り組みを相次いで打ち出している。
こうした中で、OpenAIやAnthropicほど注目される機会は多くないものの、Palantirも企業向けAIエージェント市場で存在感を強めている。企業でのAIエージェント導入では安定運用が極めて重要であり、この点でPalantirの強みを評価する声がある。
PalantirはOpenAIやAnthropicのようにLLMそのものを開発しているわけではない。Snowflake、Salesforce、SAPなど既存システムに蓄積されたデータを接続・整理するソフトウェアを提供し、それを土台にAIエージェントの構築まで支援する。
既存の企業向けソフトウェア企業の中には、自社データを外部のAIエージェントに開放することに慎重なケースも多い。このため、異なるシステムにまたがるデータを扱える点は、Palantirの差別化要因の一つとみられている。
The Informationの最近の報道によると、Palantirはソフトウェアに加え、「フォワード・デプロイド・エンジニア(FDE)」のモデルでも注目を集めている。エンタープライズソフトウェア業界では、この手法の有効性を評価する関係者が多いという。
FDEは顧客企業に常駐し、PalantirのOntologyソフトウェア「Foundry」を企業ごとの業務や環境に合わせて構築するのが特徴だ。The Informationは、Salesforce、ServiceNow、Snowflake、OpenAIも同様のモデルに前向きだと伝えている。
Palantirは自社LLMを持たない一方、顧客がオープンソースを含む複数のモデルから最適なものを選び、サプライチェーンの自動監視、人員配置や在庫管理、営業データ分析などに活用できるよう支援している。
導入事例も出ている。米国で唯一のウラン濃縮施設を運営するCentrus Energyは、PalantirのソフトウェアとAnthropicのモデルを組み合わせたシステムを構築した。人員配置の調整や代替サプライヤーの選定、原子力規制委員会向け報告書の作成を自動化しているという。
Palantirは国防を中心とする政府向け事業から出発し、現在は民間企業へと事業領域を広げている。依然として政府契約の比重は大きいものの、企業向け事業は昨年大きく伸びた。
米国の企業向け売上高は昨年109%増となり、企業部門全体の売上成長率も60%に拡大した。他のエンタープライズソフトウェア企業と比べても高い伸びだ。
Palantirは有力企業との協業を通じ、韓国市場での展開も加速している。2025年にKTと韓国のAIトランスフォーメーション(AX)市場の開拓に向けて協力したのに続き、最近ではLG CNSとも提携した。
LG CNSは戦略的パートナーシップ契約に基づき、Palantir FoundryやAIPなどの企業向けプラットフォームを、顧客ごとに最適化した形で提供する。このため、Palantir事業の専担組織として「FDE」を新設する。
同組織はPalantirと連携し、製造、エネルギー、電子, 物流など幅広い業種で、高付加価値のAX案件の発掘と実行を進める。特にPalantirのプラットフォーム導入を積極的に検討しているLGグループを起点に、本格的な事業拡大を目指す計画だ。