韓国政府は、脳・コンピュータ・インタフェース(BCI)を次世代の基幹産業として育成する方針を打ち出した。立ち上がりつつある脳関連の未来産業を先取りし、研究力を産業競争力につなげる狙いがある。
科学技術情報通信部は3月18日、生命工学総合政策審議会で、関係省庁合同の「脳未来産業国家研究開発(R&D)戦略」を発表した。世界トップ水準に達した国内の脳研究力を、国民が実感できる脳未来産業へと発展させるための戦略としている。
政府はBCIを「K-ムーンショット」のミッションの一つに位置付け、2027年からミッション型プロジェクトに本格着手する。
BCIは、脳信号を活用してロボットアームやコンピュータなどの機器を操作する技術だ。政府は、臨床規制が厳しい侵襲型BCIについては、難治性疾患向け医療を中心に、安全性を踏まえた臨床実績の確保を目指す。
一方、規制負担が比較的小さい非侵襲型BCIは、ウェアラブル機器を軸に、医療に加えてエンターテインメントや防衛産業など幅広い分野で早期の商用化を進める。
プロジェクトはミッション別に産学研医の連携体制を構築し、国内研究機関に分散する有望な要素技術を統合する。技術開発から商用化までを一貫して支援し、韓国食品医薬品安全処との規制協力体制も整えて、臨床開発の迅速化を図る。
年内には、BCI研究機関やスタートアップ、分野別の代表企業が参加するBCIアライアンスの立ち上げも進める。脳埋め込み電極の素材、脳神経ネットワーク向け半導体、脳神経信号の解読といった主要要素技術についても、優位性の確保に向けた研究開発支援を拡大する。
政府はBCIと並行して、脳神経系の新薬開発も進める。血液脳関門(BBB)透過、脳神経系の逆老化、脳オルガノイドなどのプラットフォーム技術への投資を強化し、新薬開発に伴う高い失敗率の克服とグローバル競争力の確保を目指す。
認知症、自閉症、うつ病などの難治性疾患に対する治療薬開発に向け、基礎研究と臨床の連携も強化する。
産業拠点の整備も進める。大邱では韓国脳研究院を中心に脳研究インフラを集積するほか、五松・大田圏では韓国生命工学研究院やKAISTなどの政府出資研究機関と五松バイオ産業クラスターを結び、オープン型のバリューチェーンを構築する。
あわせて政府は、認知・感覚・運動の3大脳機能に関する脳波・脳画像データを学習した、脳神経ネットワークに特化した基盤モデルを開発する方針も示した。人間の脳のデジタルツイン化を政府の研究開発事業として推進する。
人工知能の学習に必要な大規模な脳データを確保する「脳地図構築プロジェクト」も、2027年から本格的に進める計画だ。
霊長類などの実験動物資源に対する需要の拡大に対応するため、国内の飼育・実験拠点を地域ごとに拡充する。長期的には、脳オルガノイドと脳デジタルツインの活用を通じて、動物実験の代替も進めるとしている。
このほか、臨床研究ガイドラインの整備や、省庁間の規制・振興協力体制の構築も進める。
ペ・ギョンフン副首相兼科学技術情報通信部長官は「今後は人工知能をスマートフォンではなく、脳と直接つないで使う時代が到来する可能性がある」と述べた。その上で「10~20年後の世界を変えるK-ムーンショットの一つであるBCI技術に大胆に投資し、グローバルな技術主導権を確保する」と強調した。