米証券取引委員会(SEC)のヘスター・ピアース委員が、暗号資産関連企業や資産運用会社に対し、規制当局との早期協議を呼び掛けた。トークン化資産や新たな取引スキームについて、問題が表面化した後ではなく、設計段階から当局と対話するよう促したもので、SECの執行偏重の姿勢に変化の兆しが出ているとの受け止めも広がっている。
3月17日付のブロックチェーン関連メディアCryptoPolitanによると、ピアース委員は最近のメディアインタビューや業界イベントで、トークン化資産や新たな取引スキームを開発する企業に対し、「問題が起きてから対応するのではなく、初期の設計段階からSECと対話してほしい」と述べた。
こうした発言は、これまで事後的な執行に偏っていると批判されてきたSECが、事前協議を重視する方向へ軸足を移す可能性を示したものとみられている。
ピアース委員は、企業が不確かな法解釈や推測に頼るのではなく、規制当局と直接コミュニケーションを取ることが重要だと強調した。トークン化商品を巡る法的・技術的な論点についても、当局として議論に応じる姿勢を示した。
あわせて、一部のプロジェクトについて限定的な実験を認める「イノベーション免除」の可能性にも言及した。ただし、投資家保護の原則を損なわない範囲で慎重に適用すべきだとの考えを示している。
また、「発行体が証券法の枠内で商品の構造を説明できるのであれば、既存の基準を超える商品も提案し得る」とも語った。
トークン化を巡る市場の関心は足元で急速に高まっている。伝統的な金融資産をブロックチェーン基盤で発行・流通させる手法は、取引の効率化や透明性の向上につながるとして注目を集めている。
複数の資産運用会社が、ブロックチェーン基盤の証券を上場投資信託(ETF)に組み入れる案を検討しているとも伝えられている。ピアース委員も、同様のトークン化に関する提案書が多くの企業から提出されていると述べ、市場の関心の高まりを認めた。
レバレッジETFを巡る議論についても、ピアース委員は規制当局の役割を明確にした。「どの商品が良い投資対象かを判断するのはSECの役割ではない」としたうえで、商品構造やリスク要因が投資家に十分開示されるようにすることこそ、当局の中核的な責務だと強調した。
一連の発言は、暗号資産業界と規制当局の対立構図に変化が生じる可能性を示している。業界側はこれまで、規制の不透明さや事後制裁中心の政策に不満を訴えてきた一方、SECは強硬な執行姿勢を維持してきた。
そのなかで今回のメッセージは、対立一辺倒ではなく、協議と調整を通じて制度の枠内に取り込む方向性をにじませたものといえる。市場では、デジタル資産が既存の金融システムと本格的に接続する転換点になり得るとの見方も出ている。