NVIDIAとStarcloudが構想する宇宙データセンターのイメージ(画像=NVIDIA)

中東情勢の緊迫化でエネルギー供給リスクが意識される中、地上データセンターの電力調達を巡る不透明感が強まっている。こうした状況を受け、電力網に依存せず独自電源を確保できる宇宙データセンター(ODC、軌道データセンター)が、AIインフラの新たな候補として注目されている。

地上データセンターを巡る制約は、電力需要の急拡大にも表れている。国際エネルギー機関(IEA)によると、2030年の世界のデータセンター電力消費量は945TWhとなり、2024年の415TWhから2倍超に増える見通しだ。

米国でも、データセンターの電力消費比率は現在の3.5%から2030年には9.0%以上へ上昇すると推計されている。電力インフラの整備費に加え、用地確保や冷却水、炭素排出規制などが重なり、設備拡張のハードルは一段と高まっている。

一方で、宇宙インフラ参入の障壁は低下しつつある。ユジン投資証券によると、1MW当たりの宇宙データセンター構築コストは現在約1億6660万ドルで、地上の5388万ドルに比べて約3.1倍高い。

ただ、ロケットの打ち上げ単価は2010年代にkg当たり8000〜2万ドルだったのに対し、足元では1000ドル水準まで低下した。SpaceXが開発を進めるStarshipが商用化されれば、さらに10分の1程度まで下がる可能性があるとの見方もある。

市場では、地上側のコスト上昇と宇宙側のコスト低下が交わる転換点が視野に入りつつあるとの評価が出ている。

こうした流れは、米大手テック企業やAI半導体企業の動きにも表れている。NVIDIAはGTC 2026で「スペースコンピューティング」プラットフォームを公開し、AIインフラを宇宙軌道へ広げる構想を示した。

ジェンスン・フアンCEOは「人類に残された最後のフロンティアであるスペースコンピューティングの時代が到来した」と述べた。NVIDIAはスタートアップのStarcloudと組み、5GW級の軌道データセンター建設計画も進めている。

Googleは2027年までに、自社AIチップ「TPU」を搭載した衛星クラスタサーバーの構築を進めている。Amazon創業者のジェフ・ベゾス氏も、今後10年以内にGW級のAIデータセンターが宇宙に建設されるとの見方を示している。

宇宙データセンター実現の鍵を握るのは、電力と冷却だ。送電網に接続できない宇宙空間では、太陽光が事実上唯一の電源となる。

打ち上げ費用は重量と面積に直結するため、高効率、軽量、放射線耐性を兼ね備えた太陽電池が不可欠となる。ユジン投資証券は、既存のシリコン太陽電池について、単接合セルの限界効率とされる約24.5%に近づいていると分析している。

次世代の有力候補として挙がるのが、シリコン・ペロブスカイトのタンデム太陽電池だ。理論限界効率は44%で、既存シリコンの29%に比べて約50%高い。薄膜構造による軽量化も見込める。

商用化の兆しも出始めている。Hanwha Qcellsは2024年12月、M10規格のタンデムセルで、ドイツのフラウンホーファー研究所から発電効率28.6%の認証を取得した。

タンデムセルが本格的に商用化されれば、現在の23〜24%水準のシリコンモジュールに比べ、発電量は約15%増えると期待されている。

冷却面では、媒質のない宇宙空間では放射が唯一の冷却手段となる。このため、高放射率材料や大型の放熱板の整備が必須条件になる。

こうしたエネルギー課題は地上でも同様に意識されている。分析では、エネルギー危機の深刻化に備える非常対応策として、バッテリーエネルギー貯蔵装置(BESS)や長時間エネルギー貯蔵設備を10GWh超、1年以内に設置する必要があるとの見方が示されている。

また、現政権は気候エネルギー環境部の新設を契機に「エネルギー大転換」政策を本格化しており、関連産業への追い風になるとの見方も出ている。

ユジン投資証券は、ロシア・ウクライナ戦争時とは異なり、今回は政策対応の方向性が違うと市場がみていると指摘した。その上で、投資家にとっては短期的な原油価格の動向よりも、政策転換のスピードに注目することが重要だと強調した。

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