OpenAIは米国防総省と連携し、自社のAIを機密環境でも利用できる体制を整えた。これまで軍事利用に慎重な姿勢を示してきた同社の方針転換として注目を集めている。ただ、実戦での運用時期や適用範囲はなお見通せず、現段階では補助的・試験的な活用が中心となりそうだ。
米Technology Reviewが16日、こうした動きを報じた。報道によると、OpenAIは最近、米国防総省と協定を結び、機密システムでも自社AIを使える道を開いた。
サム・アルトマンCEOは、自律兵器の開発に同社技術が直接使われることは望まないとの姿勢を示している。一方で、実際の運用は軍独自の比較的緩やかな指針に委ねられるとの見方もある。国内監視への利用制限についても、基準が明確ではなく、実効性を疑問視する声が出ている。
戦闘領域での活用は、本格導入というより検証段階にある。国防総省関係者によると、人間の分析官が攻撃対象候補のリストや各種情報を入力し、AIがそれらを統合分析して優先順位を示す運用が議論されている。
もっとも、AIが出した結果は必ず人が再確認する必要があり、AIが独立して意思決定する段階には至っていない。既存の映像分析システムに対話型AIのインターフェースを組み合わせる案も浮上しているが、具体的な実装は固まっていない。
こうした技術については、イランとの緊張が高まる中で実戦に適用される可能性も取り沙汰されている。大量のテキスト、画像、映像データを同時に分析し、攻撃の優先順位付けに生かす手法は、従来より迅速な意思決定を支援し得るとして関心を集めている。
半面、人が最終的に結果を検証する仕組みが維持される限り、速度向上と責任の所在を巡る議論は続きそうだ。
ドローン防衛分野での協力も、現時点では初期段階にとどまる。OpenAIは2024年末、軍用ドローン企業Andurilとの協力を通じ、攻撃ドローンの識別や対応に向けたAI活用を進めている。
Andurilの軍事管制プラットフォーム「Lattice」にOpenAIのモデルが組み込まれる可能性は指摘されているが、実際に配備されているかどうかや、その範囲は明らかにされていない。対象がドローンそのものであるため既存方針とは矛盾しないとの説明もあるが、適用範囲を巡る議論は残っている。
一方、事務・管理分野では、より具体的な活用が進んでいる。国防総省は「GenAI.mil」プラットフォームを通じて、契約、物流、調達などの後方業務に生成AIを導入しており、OpenAIのモデルも政策文書の作成や行政支援などで試験利用されている。
ただ、利用の中心は非機密業務で、実戦の意思決定と直接結びつく度合いは大きくない。
今回の連携を巡っては、その背景についても見方が分かれている。大規模モデルの学習コストが膨らむ中で新たな収益源の確保を狙う戦略とみる向きがある一方、民主主義国家が競争優位を維持するには高性能AIへのアクセスが欠かせないというアルトマン氏の認識が反映されたとの見方もある。
今回の協定は、AIが軍事分野にどう組み込まれていくかを占う初期事例といえる。足元では補助的かつ実験的な利用にとどまるものの、今後の技術統合や適用範囲の広がり次第で、実戦運用や意思決定のあり方に与える影響は大きくなる可能性がある。安全確保と責任を巡る論争も、今後さらに広がりそうだ。