画像=ゲーリー・ゲンスラー前委員長(米証券取引委員会〈SEC〉)(ChatGPT生成)

ゲーリー・ゲンスラー前委員長の退任から1年が過ぎ、米証券取引委員会(SEC)の暗号資産規制は大きな転換点を迎えた。トランプ政権の発足後、Coinbaseなどに対する訴訟や調査の打ち切りが相次ぎ、従来の執行重視の姿勢は大きく後退した。一方で、政権と暗号資産業界の近さを踏まえ、利益相反を疑問視する声も上がっている。

Cointelegraphは19日(現地時間)、ゲンスラー氏の退任から1年となる節目に合わせ、SECの暗号資産政策がこの1年でどう変わったかを振り返った。

ゲンスラー氏は在任中、デジタル資産の多くを証券とみなし、執行措置を軸にした強硬な規制方針を進めた。この姿勢は業界との対立を深め、Ripple Labsが2024年米大統領選で親暗号資産派の候補を支援する政治行動委員会(PAC)に寄付するなど、業界が政治面で対抗姿勢を強める一因になったと指摘されている。

同氏の退任後、トランプ氏は共和党系のマーク・ウエダSEC委員を暫定委員長に指名した。これを機に、SECのデジタル資産政策は急速に方向を変えた。複数年にわたって進めてきた調査や執行措置の多くが打ち切られ、委員会の主導権も共和党関係者に移った。

ウエダ氏の就任から1カ月足らずで、SECは2023年に提起したCoinbaseに対する民事訴訟を取り下げた。その後、Robinhood CryptoとUniswap Labsに対する調査も中止。2020年に始まったRippleへの執行措置についても、取り下げに向けた手続きに入った。暗号資産を巡るSECの規制姿勢が根本から見直された象徴的な動きと受け止められている。

さらに、トランプ氏が指名したポール・アトキンス氏が昨年4月に上院承認を経てSEC委員長に就任した後も、この流れは続いた。その一方で、一部の議員からは、こうした判断が暗号資産業界との密接な利害関係と無縁ではないとして、問題視する声が出ている。

実際、トランプ氏とその家族は暗号資産企業World Liberty Financialに投資し、独自のステーブルコインも立ち上げた。トランプ氏はミームコイン「Official Trump」を展開し、息子らは「American Bitcoin」の名称でマイニング事業を手がけてきたとされる。2025年6月時点で、トランプ一族が暗号資産関連事業から得た利益は10億ドル(約1500億円)を超えると推定されている。

SECは2025年、業界関係者や法律・政策の専門家を招き、デジタル資産の保管、分散型金融(DeFi)、トークン化、金融プライバシーなどをテーマにした会合を相次いで開いた。ただ、議会で審議が進むデジタル資産市場明確化(CLARITY)法案は足踏みが続き、制度整備の先行きはなお見通せない。同法案は下院を通過したものの上院で停滞しており、CoinbaseのCEO、ブライアン・アームストロング氏の反対で追加協議も先送りされた。

ゲンスラー氏は退任後、MITスローン経営大学院の教授に復帰し、暗号資産を引き続き「投機的資産」と位置付けている。退任後の1年で進んだSECの急激な方針転換は、米国の暗号資産規制が政治環境の変化にいかに左右されやすいかを示した格好だ。

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