スイスの投資銀行UBSは、量子コンピューティングがテクノロジー業界の次の局面を左右する可能性があるとの見方を示した。分子シミュレーションや最適化、人工知能(AI)、暗号分野での活用拡大を見込み、商用化は2030年代に進むと予測している。
米ブロックチェーン系メディアCryptopolitanが19日(現地時間)に報じた。UBSのアナリスト、マデリン・ジェンキンス氏率いる11人のチームは、103ページのリポートで、量子コンピューティングの有望分野として分子シミュレーション、最適化・AI、暗号学の3つを挙げた。ハイテク株全般に割高感が意識される中、量子コンピューティングを次世代の成長テーマと位置付けた。
技術の前進が鮮明になる中で、ウォール街の関心も高まっている。UBSは、実用的な量子コンピューティングを主導する企業としてIBM、Alphabet傘下のGoogle、Microsoftを挙げた。直近1年で3社は、研究段階を超えた量子システムの開発を加速させ、存在感を高めたと分析している。一方、IonQなど量子コンピューティング専業企業の株価は急騰と急落を繰り返しており、市場がなお初期段階にあることを示しているとした。
UBSは、量子コンピューティングについて、既存のコンピュータでは解けない問題を処理し得る技術と評価した。量子力学的な性質を利用することで、従来システムを大きく上回る計算能力を提供できるとし、2030年代に商用化段階へ入ると見込む。同等の計算性能を従来型ハードウェアで実現するには10^21個のGPUが必要になる一方、量子システムであれば数千万ドル規模(数十億円規模)のコストで可能になると推計した。
量子情報の基本単位であるキュービットの実装方式では、超伝導キュービットとトラップドイオン・キュービットが現時点で先行していると評価した。AlphabetとIBMは超伝導キュービットに注力しており、MicrosoftとAmazonはクラウドを基盤に複数の量子方式へアクセスできる環境を提供しているという。
なかでもUBSは、Googleが量子ソフトウェアと誤り訂正技術で主導的な位置にあるとみている。2024年12月に公開されたGoogleの「Willow」チップについては、キュービット数の増加に伴って誤りを減らすことに成功したと評価した。さらに、従来のスーパーコンピュータなら約10垓年を要する標準的なベンチマークを5分未満で処理したとしている。
MicrosoftとAmazonは、より柔軟な戦略を取っている。MicrosoftはIonQなど小型ハードウェア企業と協業する一方、自社ではトポロジカル設計の研究も進める。UBSは、この設計が実用化されれば、より高速で安定したキュービットの提供につながる可能性があるとみている。Amazonもクラウドプラットフォームを通じて、多様な量子コンピューティング方式を支援している。投資判断では、UBSはMicrosoft、Amazon、IBMを「買い」、Alphabetを「中立」とした。
量子コンピューティングに特化した上場企業では、IonQ、D-Wave Quantum、Rigetti Computingなどが高いボラティリティを示している。IonQは時価総額が170億ドルを超える最大手だが、株価は直近12カ月で72%上昇した後、10月中旬以降は34%下落した。FactSetによるIonQの調整後ベータ値は2.37で、市場平均の2倍を超える変動性を示している。
UBSは、こうした値動きは量子コンピューティング市場が立ち上がり局面にあることを示す一方、長期的には少数の技術リーダーが主導権を握る可能性が高いと分析している。