米国が半導体関税の「第2段階」措置を予告する中、韓国の半導体メーカーに対米追加投資を求める圧力が強まっている。台湾が巨額投資をてこに関税面で優遇を引き出したとの見方が出る中、Samsung ElectronicsとSK hynixにも追加投資を迫る議論が広がっている。両社の投資余力が限られる中、関税免除の条件がどこまで具体化するかが最大の焦点だ。
第1段階の半導体品目関税は、米国時間15日に発効した。対象は先端コンピューティング向けチップに限られ、NVIDIAやAMDの人工知能(AI)向け半導体が中心となっている。
一方、ワシントン政界や主要シンクタンクでは、メモリ半導体が射程に入る第2段階こそが本番との見方が強い。ホワイトハウスのファクトシートに盛り込まれた「関税相殺プログラム」が焦点で、米国内での製造拠点投資を条件に関税を免除し、同盟国企業にも追加投資を促す枠組みになる可能性がある。
韓国政府も警戒を強めている。産業通商資源部のヨ・ハング通商交渉本部長は17日、帰国後に「韓国企業が主に輸出するメモリチップは現時点で対象から外れており、当面の影響は限定的だ」と述べた。その一方で、「第2段階措置がいつ、どのような形で拡大されるかは不透明で、安心できる段階ではない」とも指摘した。
ホワイトハウスはファクトシートで、近く半導体とその派生製品の輸入に対して、より広範な関税を課す可能性があると明記した。これに対応する関税相殺プログラムの導入にも言及しており、第2段階措置を事実上予告した形だ。
ハワード・ラトニック米商務長官は16日、Micronの新工場起工式で「メモリ半導体を作りたい企業には2つの選択肢がある。100%を払うか、米国で生産するかだ」と述べた。市場では、Samsung ElectronicsとSK hynixを強く意識した発言との受け止めが出ている。
これに関連し、大統領府関係者は18日、「昨年、韓米両国が関税交渉に関する共同ファクトシートを公表した際、半導体分野では韓国に主要国より不利にならない条件を適用する方針を明記した」と説明した。
韓国の半導体業界は、第2段階の関税対象や、対米投資と連動する免除条件の詳細がなお固まっていないとして、不確実性の高まりを懸念している。
有力視されているのは「台湾モデル」の適用だ。台湾は最近、TSMCなどとともに5000億ドル規模の投資パッケージで米商務省と合意し、関税免除を確保したとされる。AP通信によると、内訳は直接投資が2500億ドル、信用保証とサプライチェーン支援が2500億ドルという。
その見返りとして、台湾製輸入品に対する関税率は従来の20〜32%から15%に引き下げられたとされる。
これに対し、Samsung ElectronicsとSK hynixが打ち出している投資額は、台湾モデルの10分の1程度にとどまる。Samsung Electronicsは2030年までに、テキサス州テイラーに370億ドル(約5兆5500億円)超を投じる計画だ。
SK hynixはインディアナ州ウェストラファイエットに38億7000万ドル(約5810億円)を投じ、先端パッケージング拠点を整備する方針だ。米側の主張に沿えば、100%関税を回避し、台湾並みの免除を得るには、少なくとも数百兆ウォン規模の追加投資案を第2段階の交渉の俎上に載せる必要があるとの見方もある。
第2のシナリオとしては、安全保障への寄与度に応じた選別的な免除が挙がる。戦略国際問題研究所(CSIS)は、米国の国防やデータセンターに不可欠な高帯域幅メモリ(HBM)などの戦略物資と、汎用DRAMを切り分けて扱う可能性を示した。
CSISは、中国製の汎用チップによる低価格攻勢には関税障壁を高める一方、AI覇権の維持に不可欠なHBMなどは関税対象から外し、同盟国である韓国からの安定調達を優先すべきだと提言した。ただ、この場合でもSamsung ElectronicsとSK hynixは、最先端品を無関税で販売できたとしても、出荷量の多い汎用品ではMicronに対する価格競争力を失うリスクが大きいとみられる。
ラトニック商務長官が「100%関税か、米国工場か」と迫る中、どこまでが投資として認定されるのかも焦点になっている。
第3のシナリオは、米国内のインフレ圧力を踏まえたペース調整だ。ピーターソン国際経済研究所(PIIE)は、半導体への関税賦課が米国のGDP成長率を押し下げ、技術製品の価格上昇を招く可能性があると指摘した。
メモリ半導体はあらゆる電子機器に欠かせないため、関税が課されればGoogle、Microsoft、Amazonなどビッグテックのサーバー構築コストが急増する可能性がある。こうした企業のロビー活動によって、韓国企業への関税適用が先送りされたり、投資条件が緩和されたりする余地もあるとの見方が出ている。
最大の変数は、投資認定の範囲だ。Bloombergによると、単なる工場建設にとどまらず、研究開発(R&D)センターの移転、米国の大学との連携、現地採用の規模まで、関税免除の判断材料に含まれる可能性が取り沙汰されている。この場合、韓国の半導体設計や工程ノウハウの米国移転を促す圧力につながる可能性もある。
もっとも、Samsung ElectronicsとSK hynixにとっては、追加投資に踏み切る余力の乏しさが課題だ。Samsung Electronicsの半導体部門の設備投資は、昨年が34兆ウォン、今年は35兆ウォンに達すると推計されている。
SK hynixも昨年の27兆ウォンに続き、今年は34兆ウォンへ投資を増やす見通しだ。生産能力拡大に向け、約19兆ウォン規模の清州P&T7への投資計画も公表している。
加えて、進行中の米国内投資をそのままメモリ生産ラインへ振り向ける案にも現実味は乏しい。Samsung Electronicsのテイラー工場はファウンドリーとして整備が進んでおり、第2工場の用地をメモリライン向けに転用するには、現地人材の熟練度や人件費を踏まえると採算面で疑問が残るという。
業界関係者は「第2段階の関税対象と、投資規模に応じた免除条件の詳細がまだ見えていない」とした上で、「台湾モデルがそのまま適用されるのか、選別的な免除になるのか、現時点では見通しにくい」と話す。「まずは米側がどの水準の要求を示すのかを見極める必要がある」としている。